長編
□10■第\夜■
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「伯爵とアクマの楽園っすね、まるで。」
「この国に安心して息ができる場所なんて無いんだっちょ」
300年に渡る日本と伯爵の関係。
政策の裏の事実。
日本を拠点に世界へ魔導式ボディを送り出していたと。
「日本では人間もアクマも強い存在だけが生き残れるんだっちょ」
そう呟いたちょめ助の足下に転がってきた歯車は
先程まで動いていた仲間の改造アクマ。
一瞬にして張り巡らされた蜘蛛の巣のようなトラップにかかり、
レベル3に食い荒らされたボディ。
日本はアクマですら安心して息が出来ない国となっていた。
「げちょ…っ!」
「ちょめ助!?」
「伯爵様が日本全てのアクマを呼び集めようとしているっちょ!
オイラ…伯爵様の元に行かなきゃ…」
突然頭を抱え込んで苦しみだしたちょめ助。
伯爵から江戸に集まるよう収集命令を受信したらしい。
江戸に伯爵がいる。
忌々しきアクマの製造者。
我らの宿敵。
此処まで来れば針路は決まったようなもの。
「江戸へ、」
追い付くと言ったサキは、未だ合流せず。
彼女の背中を見送った事が悔やまれる。
アレンと別れたあの夜と嫌にリンクした。
どうか、無事で。
一撫でした風に想いを馳せた。
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