長編

□9■第[夜■
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教団内駿足を誇るリナリー、神田と鍛練している為、速さにはなれている筈だ。

視界の端では姿を捉える事が出来ている。





しかしソレは単体の話。
2体になれば話は別だ。










ソコからは抵抗する術もなく、
身体中に走る衝撃を何処か意識の端で感じていた。





眩暈がする。

流れる紅が視界を染めた。



手から力が抜け、握りしめた紅い刃がパリンと弾け砕ける。




スッと血の気が引いていくのを感じた。




「サキ!しっかりして下さい!」



攻撃の隙、自身にレベル3からのソレを受けながら、
ペガサスが背中で担ぎ受け止めてくれた。



ぼんやりと写る硝子の両翼。

その先に妖しく笑みを浮かべたレベル3が2体。








頭を左右に振り、意識を取り戻す。

その度グラリと視界と身体が揺れたが、
勢いをつけてペガサスの背中に跨がった。


『っ!?』


鮮血が滲む右足と左腕。

意識とは反対に、一向に動こうとしない。
斬られたせいではない。

何か、がっちりと空気が纏い込むかのように。

身体中に流れる血も、張り巡らされた神経も、
関節から下が別の生き物のように沈黙を保っている。





「我らのダークマターは、“停止”」

「その腕、その足はもう動かない。」

「そして片翼では飛ぶ事も出来まい。」



ピキピキと音を立てて固まる左翼。
片翼では平行を保てないのか、ぐらついて急降下するのを感じた。





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