長編

□8■第Z夜■
3ページ/5ページ







「天針、呪縛の針“北ノ罪”!!!」


黒い針と轟音と共に磔になったアクマの頭上には
黒いアイメイクをし、ポニーテールを高く結った老人が一人。



『ブックマン!!!』

「サキ嬢、無事か。
ラビめ、冷や冷やさせよって」







その言葉と共にマストからポロリと降ってきた彼の弟子に駆け寄れば、
ラビの身体中で“キュン”と音がし、傷が消えていく。


「ミランダの能力なんさ。」

『ミランダ?』

「後で紹介してやるよ。」






数日ぶりに感じるポンポンと跳ねるラビの掌。

お願いします、と言おうとラビを見上げれば
視界の端に見えるブックマンと磔になったアクマ。




アクマが動いた気がした。




『ブックマン!!』

「っ!?じじぃ!!!」


次の瞬間、バヒュッと激しく風を切る音が聞こえたと思えば、
天高く上るアクマとブックマン。







ブックマンの技を喰らっているのに動き出したソレは、
ブックマンを連れて物凄い速度で上昇している。


「伸!!!!」


ドンという音を立て、ラビがその後追う。
激しい風に少し身を捩った所だった。

一瞬で真っ白になる視界。

閃光を放った空から落ちてくる何か。



ラビが受け止めたと言うことはブックマンか、焦りが全身を駆け巡る。






そちらに向かおうと脚に意識を集中させたれば、
抑制するように肩に手を置かれ、呼ばれた名前。


「サキ、ここは私が」

『リナリー!!!』


その言葉を残し、瞬間で上昇した彼女は少し笑っていた。
久しぶりに見た顔で、久しぶりに見た笑顔なのに。

少し寂しそう、そう思ったのは気のせいか。







リナリーがアクマに追い付き、攻防を繰り返す。
黒い靴を発動した脚でソレを捕らえ、海に叩き付けた。

ソレを追って降下するリナリー。


一瞬の出来事だった。





.

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ