長編
□8■第Z夜■
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前方で激しい風が舞い、轟音が響き渡る中心にいる人物は
よく見知っている彼。
アクマに攻撃され、大きなマストに吹き飛ばされているではないか。
『此処で良い!』
ペガサス型アクマの背中を強く蹴り、
海面に浮かぶ一隻の船の上へと飛び出した。
周囲から彼の名前を呼ぶ声が聞こえるが、
未だ焦点があっていない。
攻撃を喰らったせいで少し眩暈がしているのであろう。
目の前にいる敵に対応出来ずにいた。
『第二解放、緋色ノ刃』
動きが鈍い彼の前に身を滑り込ませ、
鎧を身に纏った様なソレに向かい、
振り下ろされる拳を刃で受け止める。
『っ!』
「サキ!?」
『退いて、ラビ!!!』
力が強すぎる。
受け止め切れない。
「痛い、な。この剣は。」
『ぇ、あっ!!!』
ジュウと剣に触れるアクマの手が焦げ付いているのが見えた。
その瞬間、弾かれる様に吹き飛ばされた身体。
甲板に激しく叩きつけられ、背中が撓る。
『っ!!!!』
「サキ!」
起き上がろうとすると背中に激痛が走り、小さな息が漏れた。
が、次の瞬間キュンと音がしたと思えば楽になる呼吸。
何もなかったかの様に背中はもう痛まない。
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