長編
□7■第X夜■
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師事している元帥も使用する鞭には慣れているものの、
こう何本も同時に攻撃されると話は別だ。
生き物の様に動き、その身体を撓らせ、此方に向かってくるソレは
正直次に来る方向が読みにくい。
しかしだ。
―――ユウより遅い。
掠りはするものの、避けられる。
先日までの鍛錬がかなり役に立った。
が、先日ぶち当たった壁に此処でも行く手を遮られるとは。
攻撃をかわせはするものの、間合いに入りにくい。
上手く入ったとしても蹴り等を繰り出している間に鞭が押し寄せてくる。
少し離れた所で炎の弾丸を撃ち込んでも同じ事。
攻撃が、しにくい。
《剣道三倍段、さ》
不意にラビの言葉を思い出した。
―――そうか、素手では。。。
鞭を避けながら右掌をみる。
眼の奥でイノセンスが応えた気がした。
『…緋色ノ瞳(カーディナル・アイ)第二解放、緋色ノ刃』
刹那、身体中にドクンと血が沸騰した感覚が巡り、
ソレが右手に集中する。
パキパキと音を立てながら、右手に発生していた炎が凝固されていき深紅の柄が現れた。
ソレを掴むと周囲の炎が右手首に蔓の様に撒き付いて固まり、
更にドクンと眼の奥が熱くなれば細く長く深紅の刀身が現れた。
―――いける!!!
ルル=ベルが此方を見て驚いている隙に、間合いまで詰め込み
迫りくる鞭の一本を切り払った。
スパっと裂け、双方に焼け焦げたような跡が出来る。
切り落とされた鞭の先は黒い煙を出して蒸発していく。
勢いに乗って彼女に切りかかった。
幾つもの手が刃を掴むが、それと同時に燃やし尽くす様な炎が発生する。
「っあぁぁぁ!」
彼女の身体を覆った真っ赤な炎のせいで、その場に崩れていく。
これ位の事では多分倒せやしない。
第二解放の、しかも初めて出したコレに身体がついて行っていないのが解る。
鼓動が速い。
背筋に嫌な汗が流れて、少し眩暈が起きている。
血が沸騰する様だ。
炎の塊に包まれている彼女を一瞥し、公園を後にした。
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