長編

□6■第W夜■
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先程の駅寄りは少し小さめだが、
少し足を延ばせば海辺に出られる街に着いた。

駅から少し歩いた街中に待ち合わせ場所とした公園がある。
潮風を背にしながら舞い上がる髪を耳に掛け、トランクを持ち直す。


―――そう言えばユウに紙紐を切られてから髪を纏めるのを忘れてた。

少し伸びた紅色のソレを整えながら、角を曲がる。









「探した、サキ」


眼の前に現れた人。
金色の長い髪を後ろで一つに括り、パンツスーツを身に纏う女性。
サングラスを掛けているせいで眼元は見えないが、冷たく放たれた自分の名前。


見た事もない女性だが、背筋が凍ったのは隣に連れているアクマだ。

レベル2を2体。
ソレを従えている彼女は一般人ではない、と容易に想像できる。








「私はルル=ベル。ハジメマシテ。」

一緒に来てもらおう、そう言いながら此方に手を伸ばされる。
トランクを掴んでいた手が震え、落してしまった。

拾っている余裕はない。
2、3歩後ずさる。






「挨拶はちゃんと、と主が言っていた。」

礼儀知らずな奴だ、と言いたげに小さくため息をつく。
す、とサングラスを外した。

その瞬間、肌が褐色に変化し、金色の髪は黒へと。
綺麗に切りそろえられた前髪が風に靡くと、額には十字架の聖痕が現れていた。





―――ノア!!!!

「ティキ・ミックから連絡を受けなければ見付けられなかった。」

やはり先程の駅で感じた何かはコレか。







膝が笑う。
眼を逸らした瞬間に息絶えるのではないか、そんな悪い想像が頭をよぎるが
一向に攻撃してくる気配がない。
時たま開かれる切れ長の眼には確実にアタシが着ている服を捉えている筈だ。


いう事を聞かない脚を強く拳で叩き、弾かれた様に走り出す。
イノセンスを発動し、脚の炎に神経を集中させた。
リナリー程ではないが、こうすれば速く移動できる。



レベル2、2体位は少し苦戦するが、倒せない事もない。
しかしノアがその戦場に同席するのならば話は別だ。
アクマは殲滅、そうユウが口癖のように言っていたが、
撤退するしかないと身体が言っている。






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