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□いとおしい
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志摩廉造。
正十字学園一年生兼祓魔塾で詠唱師を目指している京都出身の少年。
そんな彼に最近新しい恋人ができたらしい

「奥村くうう−んっ!!」

猛ダッシュで愛しい恋人の肩に抱きつく。

「うおっ!志摩…っ!いって−よ!!!!!!」

そう、涙目になりつつこちらを見上げてくる彼こそが俺の愛しい恋人、奥村燐くん。

「涙目に上目遣い!!!!さすが奥村くん、俺のツボをわかっとるわ〜!!キスしてもええ?」

昨日塾が終わってからもう何時間も触ってなかったのだ。
会いとうて触りとうてたまらんかった俺好みの桃白色の頬に手を添え、引き寄せようとすると

「わっ!!なっ!何すんだよ!ここ廊下だぞ…!!…ツボとか意味わかんね−し!!」

どんっと肩を叩かれ距離を作られ防御体制に入られる。

ああ〜…
相変わらずツンデレさんやなあ。
まあ、そんなつれないとこも好きなんやけど。
赤に染まる頬が可愛すぎて俺の理性がフェードアウトしそうってことに気づかんのかなあ、この天然さんは!!

「待って−な奥村くん、逃げんといて−!そんなに距離とられたら悲しゅうて俺死んでまう!!」

改めて抱きついて髪を撫でると、最初しぶってた奥村くんも周囲を見回し、周りにだれもいないことを確認すると俺の首に顔をうずめ、背中に手をまわして引寄せてくる。

「奥村くん、可愛ええ!!」

「うるせ−!!」

暴言を吐きながらも更に力をいれて俺を引き寄せようとするのは、本気で嫌ではないという証。

ああ、俺、超絶幸せ者や…

最初に告白したのは志摩の方だった。
はじめはびっくりしていた燐だったが

「…っ!俺も志摩のことが好きだ…っ!!!」

相思相愛になれた嬉しさでその後のことはあまり覚えてない。



「せや、奥村くん!この後お暇やったりしはる?」

放課後デートに誘ったろ思てたんや!
と言うと、

「ん?ああ、別に何も「「兄さん!!!!」」

うわああ出よった…!!
ちょうどの時やのに…!!

「兄さん!ここにいたんだね!もう…心配したんだよ?今日も一緒に帰ろうねって約束してたのに」

「えっそうなん?!」

「雪男……まったく記憶にないんだが」

「ひどいなあ兄さん…ちゃんと今朝言ったじゃないか、……兄さんが寝てるときに」

「…っ!覚えてるわけね−だろ!!!」

「こりゃらちあきませんわ…」

苦笑しつつも奥村くんの寝顔毎日拝めるなんて、若先生ずるいわあ、と軽く嫉妬心を燃やしていると

「雪男、わりぃ。今日は志摩と帰るわ」

スルっと俺の腕に華奢な腕をまわしてくる奥村くん。ちょ……やばい可愛いんやけどこの子…!

「ちょっと!!兄さんなにやってるの!!??
…っ!兄さんから離れろこのピンク頭!!」

兄さんが汚れる!!!

と半ば叫びつつ殺意むきだしの瞳でこっちを見てくる奥村弟……はは、どないしょ……とりあえず俺にはこの腕は振りほどけんわ、いろんな意味で。

「雪男。」

ちゅっ

……………………どぇぇえええ!!!!????
弟のほっぺたにちゅ−しよったでこの子!!!!!!

「ちょ…っ!奥村くん、彼氏の目の前でほかの男にちゅ−とか何考えて…!!」

せんせは頬染めて放心状態やし!!

「雪男、俺は今日志摩と帰りたいんだ。言うこときいてくれるか?」

「兄さん……わかったよ…」
「えぇ!!なんやこの人!!」

「あんがとな〜!!んじゃ、志摩行こ−ぜ!!」

「あ、ああ!!」

タッタッタ−と奥村くんが俺の手を引っ張って駆けていく。
ちょうど奥村先生が見えなくなったあたりで立ち止まり、こちらを振り返る。

「…はあっ…もう止まってもいいだろ!!」

「おっ奥村くん!!」

「うまくいっただろ!!雪男のやつ、むかしっからあれやるとなんでも言うこときいてくれるんだぜ〜!!」

おまじないなんだ!!

と、一欠片も悪意のない笑顔を見せられてはもう何も言えない。

ほんま…悪魔やで…この子は…

「燐」

ちゅっ

と顔を近づけ柔らかい唇に自分のそれを重ねる。

「……な…っ!」

みるみると赤に染まっていく奥村くんが、死ぬほどいとおしい。
叶うなら自分だけのものにして、自分のことしか考えられない様にしてしまいたい。

「さっきのおしおきや!!へへ〜、奥村くん、顔真っ赤やで」

「うっうるさい!!」

「………ほな行こか」

手を指しだせば、伸ばしてくれるこの子が、とてもいとおしいと思った──


─────────

奥村くん、もうあのおまじないは使うたらあかんよ

え、なんで?

なんでもや!!!!
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