少年陰陽師2

□サルスベリ
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昌浩の席は窓際にある為、その噂のサルスベリの木が見える。

強い見鬼の才を持つ昌浩にはその手の類のモノは見えてしまうが、ごくごく普通のサルスベリの木で特に危ういものの気配は感じられない。

「ねぇ、もっくんはどう思う。俺は特に噂になっている幽霊の類は見えないんだけど」

昌浩の肩に乗った白い小さい犬か猫の様な化生は、校庭の方へ視線を投げて答える。

「俺にも悪いものは感じられない。ただ、あの空間だけ歪んでるようには見えるがな」

「歪んでいる?」

「昌浩、全ての妖の類が悪意だけで動いているとは、限らないぞ」

校庭を見遣っていた物の怪が昌浩を見やり、言う。

「この噂の最もな原因となったのはなんだ?」

この噂の原因のもと、その木には女の子の幽霊がでる

女の子はとても寂しがり屋で、寂しさ故にサルスベリの木の前で遊ぶ子を道連れにする。

そしてこの噂は広がりを見せた。

物の怪は昌浩の肩の上で目を眇めて、もう一度サルスベリの木を一瞥し、言った

「消えたのは、遊んでいた子どもではなく、その女の子かもな」
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