少年陰陽師2

□温かな感情
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言えば、先程の笑顔を消し、フンっとそっぽを向く。

でも、先程の笑顔を見たから、食ってかかる気がしない。

「俺にとってはどうでもいいことじゃないよ。大切な人達には笑っていてほしい。それは人でも神将でもだよ」

そう、青龍の背に話しかけるが、青龍は背を向けたままだった。

「青龍の笑顔は、そうだな。この庭で言うなら咲き誇れる花かな。いつでも見れるわけでも無いけれど、見れば周囲の人の心を温かくしてくれる癒しの花かな」

昌浩は青龍の背を見つめ優しく言った。

これまで青龍と話した事など数えるほどしかない。話をすれば突き放すような物言いしかしないし、顔を見れば眉間に皺を寄せ不機嫌極まりなかったが、嫌いにはなれなかった。

それは、青龍の目を見たからだ。
まるで、吸い込まれそうな深い碧。そして、何もかも見透かされそうなほど凪いでいる。その碧は冷たいイメージとはかけ離れていて、温かみのあるものだったから。

「本当に俺、今日は運がいいなぁ。青龍の笑ってるところ見られたし、少しだけだけど、話も出来て嬉しかった」

昌浩は柔和な笑みを浮かべると、青龍に背を向け、邸の縁側まで歩いて行き腰をかけた。

日差しのちょうどいい温かさを感じて少し眠気を感じる。
これから、やりたい事がまだあるのにと思いながら、眠りに落ちた。

言いたい事を言うだけ言って、眠ってしまった彼に青龍は近付き睨めつける。
だけども、言われて嫌だと感じる事はなかった。
そして、今、眠っている彼を起そうとも思わない。

夢なら夢だと思っていればいいと思う。温かい夢を見たと。
いずれは、いつかはその笑顔は現実のものとなり、彼に向けられるものになるのだから。
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