少年陰陽師2
□想いは伝わる
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「あれ、玄武来てたんだ」
子どもの姿の神将は昌浩を見てすぐさま水鏡を渡してきた。
「えっ!?玄武?」
「晴明が昌浩に話したい事があるそうだ。だからこれを。要件は済んだ。我は帰る」
そこからすぐさま隠遁しようとする神将に昌浩は礼を言った。
「ありがとう、玄武」
「あぁ、何かあればまた我を呼べばいい」
そう言って今度こそ隠遁した。
「じい様が話したい事ってなんだろう?」
そう言って昌浩は水鏡を掲げた。
始めに映ったのは太陰だった。じい様が目覚めた事でいつもの元気が戻ってきたようで、蹲った涙をこらえていたようなそんな影は微塵も見えなかった。
「太陰、じい様は?」
「ここにいるわよ。」
「そう、じい様が用事があるようだと聞いたんだけど?」
「あ、えっと、それね…」
急に太陰の歯切れが悪くなってどうしたものかと思っていると、太陰が水鏡を晴明が映る高さまで移動させたようで、晴明が姿を見せた。
「昌浩や」
「じい様!大丈夫なのですか?」
「なんじゃ、昌浩までわしを病人扱いするのか?じい様は悲しいぞ」
「心配して当然でしょう。どれだけ眠ってたかわかってるんですか?それに病人扱いするのかって病人なんで当たり前でしょう!」
そういう昌浩に晴明は文句を言うが、可愛い孫にそれだけ心配されて嬉しくないはずがない事を周囲にいる神将達は知っていた。
「それで、どうしたんですか?」
「そうじゃな、昌浩には面倒をかけたようじゃの。すまんかったな。神将達の事も」
晴明が神将達と言った事で太陰が歯切れが悪かった事を思い出す。太陰はあの櫻の世界での事を引きずっているのだ。
「本当です。でも、神将達はじい様と仲間を護ろうとしてでしょう。わかってますよ」
そう言って昌浩は水鏡の片隅に映った太陰に目を向けた。
太陰は怯えた子どもの様に身を強張らせていた。
「わかってるよ。太陰。もっくんだって、勾陳だってわかってる。護りたかったんでしょ。じい様を」