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□想いの果て
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城の一角でアトロポスと話をしていた時だ。その日は、空は晴れわたり、雲一つない日だった。日差しは暖かく、外でのティータイムには丁度いい気候だった。
湯気のたったティーカップを手に持ちそっと口元に運ぶ。
口に含めば少しの甘みに華やかな香りがたった。それだけで、随分と高級な紅茶だとわかる。そんなのどかな午後だった。
「それは、ソープ様がいらしたからですわ」
久々に会う事が出来たアトロポスは僕に言った。
「僕がいるから?」
「はい。ラキシスにとってソープ様は全てですから。あの子は他のどのファティマよりも騎士達よりも強い力を持っているのです。それは、ソープ様と共にある為です」
「そんな力、僕は見た事がないけど…」
僕が知っているラキシスはいつも僕とふざけたり、たわいのない話をしたり、ただそれだけだった。MHに乗ればその力は申し分なく、バランシェファティマの中でも飛び抜けたMH補佐能力を見せたが、普通の戦闘力を見せた事はなかった。
アトロポスは少し切ない目をして僕に言った。
「これから、ソープ様もラキシスも辛い試練が訪れるでしょう。そして、多くの出会いと別れを繰り返して、遠い時の果てに貴方は出逢うはずです」
ソープは首を傾げた。
「出逢う?一体誰と?」
その言葉にアトロポスは答えなかった。
ただ、一言。
「今も、昔も、貴方が選ぶのはただ一人だけ」
切なく瞳を揺らしながら。
その想いを受け取るのも、捧げるのも、ただ一人だけ。