少年陰陽師
□お題:奪われたものと手に入れたもの
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いつもある優しい瞳が、守ってくれる腕が、まさか灼熱の刃となって自身を貫くとは思いもしなかった。
目が覚めたら、見慣れた天井が見えた。
しばらく自分の置かれた状態が理解出来ずに天井を見上げていたが、ふといつもある気配がしない事に気付き、首を動かして探した。
そこにフッと神気が湧きあがり勾陳が出現した。
昌浩は掠れる声で勾陳に問うた。
「紅蓮は?」
勾陳は昌浩を見つめたまま何も発しなかった。
昌浩は喉が干上がるのを感じ、自身が震えている事さえも気づかないようだった。
まさか、まさか紅蓮が…そんな事ないよね。
あれは夢だったのだと、とても悪い夢だったと思いたかった。