少年陰陽師
□お題:寂しいのは自分だけ?
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嵐が通り過ぎ少し肌寒く感じるころ。昌浩は紅葉に染まった木々を見渡す。
「もう秋なんだね。もっくん。」
物の怪姿の紅蓮に声をかける。
「言ってる間に冬が来るぞ。」
といった紅蓮に昌浩は嫌な顔をして
「寒いのは嫌だなぁ。あっ、でももっくんを首に巻いていれば温いか。」
ははっと昌浩は笑う。
「俺を巻物代わりに使うんじゃねぇ。」
「えぇ、いいじゃん。温かいし、もっくん毛がフサフサで気持ちいいしさ。」
笑いながら昌浩は話していたが、急に神妙な顔になって言う。
「もっくんがいたらさ、それでいいと思ってたんだ。」
紅蓮は何の事だかわからずに目を瞬かせる。
「もっくんが生きていたら、それだけで・・・。俺の命を全部使っても取り戻したかったんだ。」
その内容にハッとする紅蓮。
「結局、ばあ様に背中を押してもらって帰ってきたけど、もっくんに施した呪で俺の事覚えないようにしたらもっくんが今までみたいに話してくれなくて・・・すごく辛かったんだ。」
まるで今にも泣きだしそうな昌浩に紅蓮はただ聞くことしかできなかった。
「もっくんが辛い思いをするのが嫌だってかけた呪だったのに、その視線がすごく痛くて辛かった。」
そして、色づいた木々を見つめていた昌浩は紅蓮に視線を戻し、笑って言った。
「だからもっくんが思い出してくれてすごく嬉しかった。もっくんが哀しい思いをするってわかっていても。」
ようやく紅蓮が言葉を紡ぐ。
「俺はお前の事を忘れてたことの方が辛い。お前が、辛い思いでなら覚えてなくてもいいとかけてくれたものだが、俺はそのことの方が辛かった。お前に辛そうな顔をさせてることが。」
俺が昌浩という光を貰った時に俺は誓った。
この子の為に心を砕こうと。
昌浩を守ろうと。
「もっくん。」
昌浩が紅蓮に声をかける。
「今度こそ俺が守る。」
昌浩は優しくほほ笑むと紅蓮に言う
「今度はどこかにいちゃあダメだよ。俺にはもっくんが必要なんだからさ。」
あぁ、といい紅蓮は口ごもる。
俺はお前に手をかけた。理を犯して。それでも、それを知っても傍にいてというのなら俺はお前の傍にずっといる。
昌浩は優しく物の怪を見つめる。
あの時傍にあったぬくもりを無くして、傍らないない事を知って寂しかった。
いつものように笑いかけて話してくれないことが辛かった。
だから、今度こそ絶対守ってみせるから。
お互いの心の中で呟かれた言葉が言霊となって消えていく。