少年陰陽師
□お題:雨音を聞きながら
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季節は梅雨。
毎日雨の日が続きさすがに昌浩も出仕するのが嫌になってきたが、仕事なのだからそうはいかない。
内着に泥がつかないように歩きながら言う。
「この雨何とかならないかなぁ。雨も作物の実りに大事だってわかっているけど、こう続くと嫌になちゃうね。」
そういうと物の怪姿の紅蓮が
「じゃあお願いしてみるか。貴船の祭神に。」
からかうような物の怪に恨みがましい表情を向け昌浩は言う。
「無理、無理です。ごめんなさい。高於の神」
泣きそうな表情になりながら昌浩は言った。
それにしても、よく続く雨だ。
雨は決して強いわけじゃなく、しとしとと降っている。
昌浩は空をみやげ見る
顔にポツポツと落ちてくる消して強くはない雨。
「ねえ、もっくん。この雨って誰かが泣いているみたいじゃない?」
何を言うんだという顔で昌浩を見た紅蓮だが哀しそうに空を見やげる昌浩を見ていった。
「そう見えるのか。お前には。」
「よくはわからないけれど、なんだかそんな気がしたんだ。ごめん。変な事言って。急ごう。もっくん。」
見上げていた空から視線をはずし陰陽寮まで走り出した。
物の怪は先ほどまで見ていた空を見やる。
「泣いているか。確かにそうかもしれんな。」
誰にも聞こえないような声音で紅蓮は呟いた。
雨はしとしとと降っている。
まるで悲しみを肩代わりするように・・・。