少年陰陽師
□お題:届いた手紙
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彰子からの伊勢での暮らしがどうであるのかこと細かく書かれた手紙が月に何度か送られてくる。
その手紙は彰子らしく丁寧でそして、昌浩の心配を少しでも減らそうとしているのか、この日はどんなことがあった。中宮がどうだったとか詳しく書かれていた。字も女性らしく流麗だった。また、彰子が好む香の香りが手紙から漂っていた。
昌浩は彰子からの手紙をいつも心待ちにしていたが、もらうのはいいが返すのは彰子が送ってくれる期間よりもなお時間がかかる。
昌浩は文を考えるのもそうだが、字が下手でとても悩んでいた。
自分の字が人に見せるようなものではないとわかっていたから。
それでも敏次に行成様の手書きの書をもらいそれを例にしているうちに少しは見れるようになってきたのだ。
(本人はまだまだと思ってはいるが)
そして、彰子に返事を返すまであーだこーだと何枚も紙を無駄にしながら手紙を書いている。
今日もそうだった。
「昌浩や。もうそろそろ終えて明日にしたらどうだ。明日も出仕だろう?」
もっくんは丸くなりながら昌浩に言う。
「そうなんだけど、早いこと手紙を書いて彰子に送らないと。でも、上手く書けないんだ。」
と頭を抱える。
「成親兄上だったらもっと簡単に書けるんだろうけど・・・。」
「別に特別こった事を書く必要は無いんじゃないか?昌浩が思ったままを書けばいいんだよ。」
紅蓮の言葉に昌浩は目をしばたたかせる。
「思ったことを・・・・・。」
彰子がこの家にいないのはやはり寂しい。あってちゃんと話がしたい。
思いをあげればきりがない。でも、
「ありがとう。もっくん。書きたいことわかったよ。だから、もう少しだけ頑張ってみるよ。」
そういって手紙に筆を走らせるのだった。
しばらくして、昌浩の手紙が彰子のもとに届いた。
相変わらずのたどたどしい字で。
でも、思いは十分に伝わってくる。
彰子は手紙を読みながらそっと微笑んだ。
書かれていることは彰子を気遣うことばかり。そして、
早く会いたいと。
彰子は嬉しくなった。昌浩がそう思ってくれていることが。彰子も同じ思いでいたから。
彰子は昌浩からの手紙を胸に抱き、昌浩のいる地を思った。