少年陰陽師
□お題:ごめんね
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予感は最初からあった。
あの日昌浩が夕暮れ時に私に笑顔で
「いってきます。」
と言った時から。
つきりと痛む胸を押さえ、彰子は昌浩なら大丈夫と願った。
そして、昌浩と同様に笑顔で言った。
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
彰子の送り出す言葉を聞き昌浩は安部の邸を後にした。
彰子は心の内で行かないでと訴える心を抑えながら昌浩の背を見えなくなるまで見送った。
それが、昌浩の最後の姿になるとは思いもせずに。
昌浩が十二神将に認められ、それなりに時間がたったある日の事。
都から人々が突如消えるという事態が起きた。
それは、一人や二人ではなく、何十人という値で。
陰陽寮も手を尽くしたが、なかなか形跡を見つけ出すことができず、青年となり、陰陽師として認められてきた昌浩に依頼が来た。
話を聞いた昌浩は白い物の怪の姿をした騰蛇に話しかける。
「どう思う。もっくん。」
物の怪は険しい表情を見せ、昌浩に言う。
「ここまで確実に形跡を消せるとなると、そこらの妖と訳が違うぞ。もしかしたら、異邦の妖異の可能性があるな。」
その言葉に昌浩は真剣な表情をし、
「今のうちに手を打った方が得策かな。」
といい、十二神将達に妖の気配を探ってくるように命じる。