PandoraHearts
□幸せ
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ずっと、自分を見てほしくて、でも、ずっと近づく事さえ出来ずに、言葉も交わすこともせず、父さんの心情を考えずにきた。
まわり始めた運命のもと、会うことはできたけれど、結局、全てが遅かった。
あの人は、エイダを置き去りにしたわけじゃなかった。俺に懐いていて、そして、叔父さんを父のようにしたっていたから、そこから切り離すことは出来なかったんだ。
俺がアヴィスにいる間も会おうとしなかったのは、エイダの口から俺の事が語られるのが怖かったんだろうと思う。
あの人は最後の最後まで俺を否定して、否定することで居場所を与えてくれていた。
憎んでいるといって呪ってるといってたけれど、俺という存在に会うのが一番怖かったのだろう。
生まれてくるはずだった子どもと俺と重なって見てしまうことが。受け入れてしまうことが何よりも怖かっただろうと思う。
最後まで呪いの言葉を紡いでいたけれど。語り合うことができたなら何かが変わっていただろうか?
「お兄ちゃん?」
ポロリと涙を流すオズに気を使ういながらエイダが声を掛けた
「叔父さんと父さんの分まで俺がエイダを守るから。ギルもアリスもいるからな。エイダ」
「うん。お兄ちゃん」
涙を流すオズがとても儚げで、でも、その横顔はどこまでも綺麗だった。
容姿はジャックの物かもしれないが、容姿の麗しさではなくオズという存在が破壊の象徴のように思われているが、その存在がどれだけ優しく穏やかで穢れなき存在なのかがわかるだろう。ただ、力の使い方を間違われただけだ。本来ならば誰からも愛し愛された存在であった筈なのに。
「お兄ちゃんはお兄ちゃんよ。私の自慢の大好きなお兄ちゃんよ」
父親が不在でいつも手を繋いで寂しさを紛らわせてくれてた。
「エイダ・・・ありがとう」
また、涙が頬をつたった。
そうやって手を繋いで歩いているうちに騒がしい声が聞こえてきた。
ギルとアリスのようだ。オズの姿を見てホッと胸をなでおろし、急ぎ走り寄ってくるギル。緊張の欠片もなく相変わらず元気いっぱいのアリス。
その様子を見ながらオズは思った。ただ、辛くて悲しいだけではなかったと
(本当に幸せだな)
これだけ自分を思ってくれて入る人がいる事が堪らなく幸せだと空虚だった胸の中を想いが降り積もっていく。
これまでも、これからも俺の愛すべき人達。