その少女、陰陽を指し示す

□眠れる魂呼び覚まされし時5章
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ふわりと風が頬を撫でる
その風も今や少しばかり熱気を孕んでいる
太陽も少し前までは穏やかな暖かさを地上に届けていたのに
今ではギラギラと焼けつくような暑さでこちらを突き刺してくる

もう、初夏というには夏が来すぎている


そう、来てしまったのだ夏が
暑い暑い夏が



「…………暑いぃ」

とぼとぼと通いなれた通学路を歩きながら昌希は暑い暑いと連呼していた
先程の「暑い」は家を出てから既に7度目の暑いだ
もともと昌希は暑さに弱い
寒いのは物の怪を首に巻けば済むが暑いのはどうしようもない
というのが昌希の持論だ

あっとうまに5月も過ぎ、6月も半ばに差し掛かっている
そこらの木々がよりいっそう青々としてきた

そんな昌希にとって地獄の季節が始まろうとしているのだが
夏は夏で昌希の好きな行事が多い

一つはなんと言っても夏休みだ
いつも折り返し地点で宿題はすべて終わらせてしまうので
後半も前半ものんびりできる
中途の一週間は怒濤のように忙しいが

もう一つは、7月の初めにある球技大会だ
クラス対抗でバレーかバスケをするのだが
今年のクラスはいったいどちらでエントリーするんだろうか
個人的にはバスケがいい
バレーはぼーっと立ってる時間が多いからちょっとつまらない
まぁ、ぼーっと立ってる時間が多くなるのは僕たちの技量が無いからなんだけど
と、昌希は胸中でポツリと独白する


「…………今日、種目決めだなぁ〜」

そう、今日の6時間目は球技大会についてのクラス会なのだ
そこで種目を決めるのだ

「バスケがいいなって言ってみようかな〜」

小中高一貫の学校だから行事もちょっとは共通だったりする
なので小学校の頃も球技大会があった
小さい頃からバスケが好きだからいっつもバスケに票を入れていた
懐かしい、そういえばいつも僕のクラスはバスケだったな
と過去の記憶を回想する昌希は知らないことだが
昌希がバスケに票を入れるから皆がバスケに票を入れていた
というのが真実だったりする


「…………暑いぃ」

8度目の暑いが昌希の口から溢れたとき

うだうだと暑さにやられながらも歩いていた昌希の肩を
誰かが後ろから叩いた
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