少年陰陽師2

□変わりゆく想い、降り積もる想い
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変わりゆき時降り積もる想い








「紅蓮、勾陳!なんで、こんな・・・・っ!!」

昌浩の悲鳴に似た叫びが響きわたった。




どこから夢なのか、現実なのかわからない。

ただ深い悲しみが、痛みが胸を抉っていく。暗く深い闇の底へと沈んでいく。

つきりと痛む胸を押さえて眼を開いた。
そこは眼を凝らしても先が見えない闇しかなく、他の誰がいるのかさえもわからない場所だった。

「ここは、どこだろう」

口をついて出たのはここにいることに対する疑問と自身がいる場所について。

昌浩は闇には慣れている。それは幾度も苦しい経験をしてきているから。
その経験があるからこそ闇を怖れない。

いや、怖れないよう安倍晴明に鍛えられたと言うべきか。

幼くも夜間から深夜にかけ都中を駆け回った。そして妖と対峙した。だからこそ闇を怖れない。

だが、それは側にいる温かな存在があったからでもある。

「もっくん!勾陳!どこにいるの?おーい。もーっくん!!」

勾陳は常日頃側にいるわけではない。だが、紅蓮は昌浩の側を離れない。

常に昌浩に危険が及ばぬように常に最善を尽くしてくれている。
しかし、今ここにいるのは昌浩一人だった。

指先が冷たく冷えていく。

どうして、もっくんがいないんだろう。

それが、昌浩の内を掻き乱し、更に不安を煽っている。

側にいない、それは今まで昌浩にとって良いことなど何も無かったから。

だから、その事態陥って、混乱をきたしている。

声が震え掠れる。

名を呼べば来てくれるだろうか?
いつものように変わらない口調で。

“そんなに慌ててどうした?晴明の孫や”
と。

だが、名を呼んで来てくれなかったら?

ドクンと心臓が大きく脈打った。

もし、何かあったのだとしたら。

闇は人の心を容易く暗転させる。不安はさらなる不安を呼び、時に現実にもなる。

「どう・・し・た・・ら・・・っ!」
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