少年陰陽師2

□降り注ぐ雨
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突き刺さるような冷たさを伴う冬から、少し暖かみを感じるようになった最近だが、それでも、雨が降れば、その暖かな陽気も何処へやら。急激に気温が下がる。

今日もそんな日だった。春はもう近いというのになんで雨が降るのかと苛立ちのような思いを抱えながら、空を見上げたのだった。

朝の早い昌浩も気温の差に褥を抜け出せずにいた。

「なんで、雨がふるかなぁ」

そう呟いた昌浩に昌浩の頭元で丸くなっていた白い物の怪が答えた。

「そんな事知るか。聞きたいなら、あの神に聞けばいいだろう?」

いとも簡単に言う物の怪に布団の中から顔を出した昌浩は軽く物の怪を睨んだ。

「そんな事聞けるわけないじゃないか。そんな事したら死ぬまで呪われるよ」
(いや、死ぬまでではなく末代まで呪われるんじゃないか)
そんな事を思いぶるりと身体を震わせる。

「まぁ、いいんじゃないか。最近、昌浩はろくに休んでないだろう。たまにはゆっくり休めという事じゃないか」

「そんな気にしてもらえてるとは思えないけど」

その言いように、物の怪は苦笑する。それこそあの神に対して失礼ではないかと。

「まぁ、ともかく、今日は休め」

うーんと唸りながらも布団の中で大人しくなった昌浩である。

外は暑い雲が覆い日差しが遮られている。そして雨がしとしとと降っている。

褥に横になり、目を閉じた昌浩は、その雨音を聞いていた。

雨はしとしとと降っている。

その音は心のさざ波を抑えていく。いつしかそれは、子守唄となった。

降り注ぐ雨は絶え間なく降っている。ただ静かに。耳を澄ませなければ聞き取る事も難しいぐらいに音も立てずに。

ずいぶん疲れが溜まっていただろうと知っていた物の怪は寝息を立てて眠った昌浩を見やる。これを気に休んで欲しいと考えていた。そして思い通りに昌浩は眠った事で、少しホッとした。

「こんな時ぐらいしか休まないのだからなぁ」

そう言い物の怪は苦笑する。

「それにしても、あの神も昌浩にはなんだかんだ言っても甘いからなぁ。もしかしたら、この雨も……」

そう呟いた声は、空気に溶けて消えた。

雨は静かに降り続ける。しとしとと。全てを洗い流し、安らぎを与えようと。

その雨がもたらしたのは、ほんの束の間の休息。




end

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