少年陰陽師2

□サルスベリ
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「ねぇ知ってる?」

「何を?」

気がついたときには広まっていたとある噂
出所はもう誰も分からない


「『サルスベリの木』の幽霊の噂」


校庭の右隅にひっそりと植わっているサルスベリの木
その木には女の子の幽霊がでる
女の子はとても寂しがり屋で



寂しさ故にサルスベリの木の前で遊ぶ子を道連れにする




だからサルスベリの木の前で決して遊んではいけない
遊べばこの世に還って来れなくなってしまうから………………







「あの噂、昌浩は聞いた?」


昼下がり
給食も食べ終わりみんな各々昼休みを楽しんでいる
今年6年生になった昌浩は今日は気分的に読書をしたい気分だったため
一人静かに本を読んでいた
そして昌浩が読書をしているところに話しかけてきたのが
同じクラスの藤原彰子
昌浩と彰子は幼馴染みで小さい頃からずっと一緒にいる
彰子の言っている「噂」とは
今、昌浩の在学している学校で流行っている
『サルスベリの木』という怪談の事だ
お陰で昌浩の教室から見える校庭の右隅のサルスベリの木の前は
子供が一人も居らずよりいっそう寂しげな印象を漂わせている

「知ってるよ、本当かどうかは知らないけど」

昌浩とてもう何度その噂を聞かされたか
いい加減聞き飽きている

「女の子の幽霊なんて視たことないよね」

彰子が声を潜めて昌浩にそっと聞いた
一見、普通の幽霊に怯える子供の台詞に聞こえなくもないが
昌浩と彰子に限ってはそうもいかない

この二人は見鬼の才つまり幽霊など人外の物を見ることが出来るのだ

「俺は視たことないよ、視たとしたら払うなり何なりしてるしね」


昌浩の後半の言葉はほぼ呟きに等しいものだった
昌浩は小学生だが陰陽師だ
まだ、半人前ではあるが
故に特に人に手出ししない人外の異形には何もしないが
今回のような噂になっているモノに対しては
それ相応の対応をしている


だから、今回も多少ではあるが調べてみたのだが
それらしい異形のモノに出会っていない


ただ、この噂に広がり方は尋常ではない
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