少年陰陽師2

□温かな感情
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太陽が頭上に登った頃、邸から中庭に出て、大きく息を吸い込んだ。

まだ、朝晩は肌寒く時には冷え込みが強い日もあるが、徐々に暖かくなりつつあるのを感じて、登った太陽を目を細めて見上げる。

日の光を浴びて身体がじんわりと暖かく感じる。

そして視線を再び中庭の一角に戻すと、いつ現れたかわからない青龍が顕現した。

「青龍…」

滅多に自分の前に現れない青龍が現れているために思わず声が口をついて出てしまった。

青龍は相変わらずで眉間の皺を刻み、こちらを睨みつけてくる。

「あっ、いや、用事はないんだけど、青龍がいるのは珍しいと思って。姿を見たら思わず呼んじゃった」

あははっと力なく笑う。
なんでこんな事を言っているんだろうという思いを抱えながら。

「そろそろ、冬が明ける。この庭も賑やかになるだろう」

安倍邸は貴族の屋敷であってもそう大きいというわけでもなく、藤原道長邸のように四季の花々を植えているわけではないが、多少、目の保養になるぐらいの花は植えている。

「うん。そうだね。花を咲かせたらきっとみんな綺麗だろうな」

そういって昌浩は青龍に目を向けた。

青龍は花の芽を見やり、目を綻ばせた。
それを見た昌浩はなんの天変地異かと思うぐらい驚いたが、そんな事を声に出そうものなら、機嫌を損ねて異界に帰ってしまうだろう。

だけども昌浩も相当驚いたのだ。
青龍もあんな風に笑うことがあるのだと。

そう思うと何だか温かな気持ちになった。溢れんばかりの。

青龍もこんな風に笑う事があるのだ。自分が知らないだけで。じい様といる時はこういう風に笑っているのだろうか。

「青龍。青龍もそんな風にいつも笑ってればいいのに。いつも難しそうな顔をしているけれど、そうやって笑ってる方が絶対いいよ。俺、青龍が笑ってるところ初めてみたけどさ、綺麗だなって思った」

「どうでも、いいだろう。そんな事」
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