少年陰陽師2

□浄化の花
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桃の花を見つめ、昌浩は言った。

「綺麗だな」

立派な幹を空高く伸ばし、その幹に多くの花をつけている。

気の時期に都の花は一斉に花を開花し都の邪気を一掃する。

邪気を吸い込んだ花びらは散る際に邪気もろとも土に還り消滅する。

強い浄化作用のある破邪退魔の木。

「そうだな。桃の花が咲いたお陰で都の気も清々しくなったなぁ」

「なんか、お腹が空いたな」

「おい。花を愛でてるのかと思えば食い気か?」

朝餉を食べ損ねたんだよ!とい言って昌浩は頬を膨らませる。
こういう所は子どもで可愛いと思って、からかってしまう。

「じゃあ、露樹に草餅でも作ってもらって、彰子を誘って此処で花見でもすればいいじゃないか」

「花見…か。いいかもしれないね。彰子も屋敷の中にいるよりは気晴らしになるだろうし」

昌浩は桃の花を見つめて言う

「此処なら彰子も穢れには晒されないだろうしね」

そう言って、物の怪に視線を向けてくる。

「じゃあ、帰って花見の用意をしよう。他の神将達も誘おうよ」

「神将も誘うのか?」

そう聞かれて、何を言ってるんだという表情で物の怪を見た。

「当たり前じゃないか。こんなにも綺麗なのだから、皆にも見せてあげないと勿体無いよ。それに、みんなで一緒の方が楽しいよ」

昌浩はにっこりと笑う

「そうだな」

「もちろん、もっくんは俺と一緒に来るんだよ。彰子がもっくんがいないと寂しがるからね。それに、俺も、もっくんと此処で花見がしたいから」

あぁ、この子はどれだけ優しくて清らかな心をしているのだろう。
自分は十数年前までは傷付くのが怖くて人とは距離を置いていたのに。
凍えた心さえも優しく溶かしてくれた。

幾星霜の時を経て知った事。
一人は寂しいという事。
ずっと知り得る事もないと思ってた温かみを教えてくれた。優しい存在。

「昌浩くんが寂しいならついて来てやってもいいぞ〜」

そう言うとジト目で睨まれ、昌浩の肩に乗っていた物の怪はペシリと肩から払い落とされた。

「いってぇーなぁ。ちょっとからかっただけだろ」

「本当にもっくんは。」

はぁとため息をつく。

「皆と一緒に過ごせる時は、一緒にいたらいいんだよ」

それが、皆との距離を縮めてくれるから。

言葉にしなかった想いを桃の木に託して。

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