少年陰陽師2
□想いの欠片
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私は太常。私には戦闘力はない。本来の私の仕事は幾星霜の時を書き綴ること。
私は幾星霜の時の記憶を書き綴ってきた。
世界の移り変わりを。
昌浩は起きる時に異様なまでの身体の怠さを覚えた。最初は疲れからかと思っていたが、朝の準備をしている際に喉の痛みに咳、そして身体の火照りを感じて、首を傾げる。
「あれ?風邪でもひいたかな?」
「どれ」
そう呟いた昌浩に、昌浩の部屋に一緒にいた物の怪が、褥に座っている昌浩に前脚を伸ばした。
「昌浩や、少々、熱があるようだぞ」
「あぁ〜身体を壊さないように気をつけていたのに!」
苦渋の表情をみせる
「今日の出仕は休むしかないな」
うっと怯んだ表情をするが、すぐに諦めたように息を吐き出した。
「休みたくはないけど、帰って迷惑かけるわけにはいかないし。父上に今日は出仕を控える事を伝えてくるよ」
「そうだな。その方がいい」
「うん。じゃあ、行ってくる」
おとなしく言うことを聞いた昌浩に物の怪は安堵した。熱があるのに出仕する何て言えば半ば力ずくで止めようと思ってもいたが、大人しく休むというならその必要もない。だけどもこんなにもあっさりと休む事を認めるという事は、余程しんどいのだろうと物の怪は思っていた。
吉昌の元より戻ってきた昌浩に物の怪は言い聞かす。
「昌浩、今日はゆっくり眠るんだぞ」
「わかってるよ、もっくん。それにしても、寒い」
カタカタと震え口唇は色を失い顔色も悪かった。
物の怪は少し考え、急に本性に戻って昌浩に言った。
「昌浩、褥から少し出てこい」
「?寒いんだけど」
「わかってる。いいから出てこい」
昌浩は渋々褥から出た。それを胡座を書いて座った紅蓮は自分の足の上に座らせ抱き寄せた。昌浩が冷えないように上布団をかけて。
昌浩は驚き目を白黒させたが、紅蓮の真意を感じ取り、身体の力を抜いた。
背中から感じる紅蓮の熱と、鼓動が心地よかった。
寒さが和らいでいくとともに眠気が急速に襲って、紅蓮の腕にもたれかかるように寝てしまった。
「眠ったか」
そう言って抱き上げると、昌浩を褥に寝かす。
そうしている内にひとつの神気が降りて顕現した。