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□ただ触れるだけの
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AKDの女王であるラキシスは少し化粧というものに興味を持ち始めていた。
ラキシスが嫁いだAKDは国王である天照の帝こそは忙しく動き回っているが、ラキシスは特にすることがなく、侍従達とたわいのない会話をしたり、お茶を飲んだりと比較的毎日穏やかに過ごしていた。
その彼女が何故、化粧に興味をもったかというと、いつもラキシスにつき従っていた侍従が化粧を変えたことで随分感じが変わった事にあった。
もともと、その侍従は綺麗な顔立ちをしていたが、やや目元がきつく近寄りがたく感じられる部分があった。その目元をややたれ目になるようにラインを引き柔らかな色合いで目元を染めている。それだけで、感じが柔らかくなっていた。
ここまで感じが変わるものなのかとビックリしたことが始まりだった。
ラキシスはそのことで自分も化粧をしてみたいと侍従達にそれを言ってみると、侍従はあらゆる化粧品を集めラキシスを着飾ろうとした。
「姫様にはこういった淡い色合いの、そうですわね、色味を感じさせないものを目元に持ってくると素敵ですわ。少しキラキラするだけでも随分違いますもの。」
嬉々とし、世話をしてくれる侍従達は随分満足げにあれこれラキシスに試していく。
ようやく納得のいくメイクが出来たのか、ラキシスに鏡を差し出した。
「陛下もこれで姫様に惚れ直しますわ。」
そこに最後の仕上げとばかりに侍従はミルキーピンクの口紅を筆で丁寧にのせ、そしてクリアーなグロスを全体的に塗り、唇がぷっくりと見えるように中央にはグロスを多目にのせた。
侍従達は「お綺麗です。」とか「可愛らしい。」とか言ってくれたが、化粧をした目的の相手が気付いてくれるかがわからない。
何せ天照は究極に疎いからだ。
毎日衣装をかえて少しでも可愛く見せれるようにしても気付かないのだから。