FSS

□冷たい程に透き通る蒼(ゼロ)
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たった1つの些細な出来事で全てが壊れてしまうなんて思いもしなかった。



これは僕に与えられた罰なんだろうか?





協議の細かい調整をアイシャと回廊で話していた時だった。

日は高く空は澄んでいて肌をなでる風は優しい。そんな比較的穏やかな日だった。

「今回は各国の騒乱が絶えないし野党を下すのは難しいかもね。」

「そうですね。そうは言ってもこのままにしていくわけにはいかないのも事実です。」

はぁーと僕はため息をついた。
AKDは各国のバランスをとるために必要だ。しかし、こう頻回に騒乱が起こると調整に時間がかかってしまうのも仕方がないが・・・・。一気に武力行使をして圧力をかけたら早いかもしれないと、無茶な事を考えてしまう。

(でも、そんな事をしたらラキシスが悲しむしな。むしろアイシャなら喜ぶかも・・・。血の気が多いし・・・。)

「なんです?」

にっこり笑って僕は言った。

「ううん。なんでもないよ。それより、どうしたらいいものかな。」

そんな時、回廊を駆けてくるラキシスの姿が目の入った。

この頃、バタバタしていてラキシスに会う暇もなく、こうして彼女の姿を見るのは久しぶりだった。

ラキシスは軽やかな黄色に近い色のノースリーブのワンピースを着ていた。走ると、ラキシスが着るには珍しい少し丈の長めのもので、走るたびにフワリと揺れる様子はラキシスによく似合っていた。

「どうしたの?そんなに慌てて。」

ラキシスのそんな姿にわずかに顔を綻ばした。

「ソープ様の姿をお見かけしたので。」

ラキシスは嬉しそうに笑った。

しかし、今は話し合いの途中で、アイシャが話題をもとに戻そうとした時、ラキシスが僕の腕を掴んだ。

何かを僕に言いたかったのだと思う。だけどこの時の僕はそれに気付こうとせず、思わずその手を払いのけてしまった。

僕は自分のしたことに気が付きラキシスの表情を見て慌てて言葉を取り繕った。

「あっ、ごめんね。ラキシス。今、まだ公務中なんだ。また、後でね。」

ラキシスの酷く傷ついた表情が深く僕の胸を貫いたが、僕は話し合いの続きをするためアイシャとともにラキシスに背を向け歩きだした。

まるで罪悪感から逃げるように。

だけども、アイシャと話し合いを終えても、その日ラキシスに会いに行こうとはしなかった。

その時胸を貫いた痛みが消えたわけじゃない。だけど、あの時ラキシスはすぐにいつもの表情に戻ったから、きっと大丈夫だと思ったんだ。

だから、僕はラキシスが酷く傷ついていることに気付かなかった。

一人で悲しみに耐えていることさえも。

そして僕はこの後取り返しのつかない事をしてしまったのだと気付くことになる。




これは僕に与えられた罰なんだろうか。

どうすれば君の痛みに報えるだろうか。

僕は・・・・・・・・

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