十二国記
□とても大好きなのです
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とても大好きなのです
夕日が水平線上へと沈みかけるころ、雲海の浜辺を泰麒と陽子が歩いていた。打ち寄せる波の音だけが響き砂の上を歩く足音だけが聞こえるとても静かな時間だった。
「泰麒、本当に無事で良かった。」
陽子が元気そうな泰麒の姿にホッと胸をなでおろす。
「こうやって帰ってこられたのは皆さんのおかげです。ありがとうございます。」
泰麒はそういい頭を下げる。
そんな泰麒麟に陽子は金波宮でゆっくりすることを勧める。
「しばらく、ゆっくりしていけばいい。」
そう優しく声をかける。しかし、今だに女王を良く思わない輩が金波宮にはおり、泰麒捜索のおりも不快を示すものさえいた。
ゆっくりしてほしいというのは陽子の真の本心だが、金波宮さえ安心とはいえず、落ち着いた状態ではなかった。
「景王、景台補は?」
陽子を見つめ泰麒は景麒の所在を問いかける。
「景麒なら今執務室にいるが、景麒と話がしたいなら呼ぶけれど・・・?」
泰麒はゆるゆると首を振り、柔らかな口調で、
「いいんです。」と答える。
「そうか?」
陽子が首を傾げると、少し笑んだ表情で、
「はい。」と答える。