さあ立ち上がれ!英雄よ!?_

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隣の席になって以来、移動教室は日吉と共に行っている俺。
流石に教室までの道のりは覚えたけど、他の教室はまだ曖昧で覚えられていないのだ。


「待ってって言ったのに…!」


授業道具をひっ掴んで、さっさと出て行ってしまった日吉の背中を追いかけ、隣に並んだ俺に溜息を吐かれた。


「お前の準備が遅いんだ」

「う…」


図星なため、ぐうの音も出ない…。


「旭」

「何?」

「氷帝には慣れたか?」

「お陰さまで大分慣れたよ」


俺の言葉に「そうか」と微笑んだ日吉はやっぱり美人だ。
テニス部の人気はこの間コートで見た通り、凄まじいもので、森野に聞いた話では人気の部員にはファンクラブまであるという。
でも、その筆頭は跡部さんだと聞いて何か納得した。
で、俺の隣に居る日吉も相当の人気があるという事がこの短期間で重々分かった。
休み時間になれば色んな学年の女子達が教室まで見に来るし、こうして廊下を歩けば注目の的。
最初は隣に居る自分が何だか居た堪れなくなって、古き良き昭和の妻かという感じで一歩引いて歩いていたが、それではぐれて以来、隣を歩くようにと言い渡された…。
なんて言うかさ…美人が怒ると迫力あるよね…。「はい」としか言えなかったもんな…。


「後は校内図を覚えれば良いんだが…」


チラっと見られて、先手必勝と言わんばかりに俺は日吉に両手を合わせた。


「それはもうちょっと時間をくれ!」

「分かっている。同じ授業なら一緒に行ってやるから安心しろ」

「…」


パカ〜と口を開けた阿呆面になった俺に日吉は不可解そうに眉を寄せた。


「何だ」

「いや…何でもない」


今、俺が女子だったら日吉に間違いなく惚れてたと思う。何だコイツ。計算か?それとも天然なのか?
天然だったら怖いよ、この子!一体どれだけの女子を手玉に取ってんの!?


「人の顔をジロジロ見るな」

「イタタタッ!こめかみに拳押し付けるのやめてくれ!地味に痛い!」


つうか笑われてるから!お前ただでさえ目立つんだから!


「お〜、日吉やん」


後ろから聞こえてきた声に、漸く日吉の拳から解放された。あ〜余韻が…。
こめかみを摩りながら日吉と共に俺も振り返ると、丸眼鏡をかけた藍色の髪の人が立っていた。
あ、この人どっかで見た…。


「どうも、忍足さん」

「移動教室か?」

「はい」


日吉と話すその人をジッと見て、頭の中の容量の少ない人の顔ファイルを捲っていると…


「イタタタッ!」


またしてもコメカミに拳を当てられた。


「だから人の顔をジロジロ見るなと言っているだろうが」

「分かった!分かったから!」

「何や、随分仲良いなぁ、自分等」

「ただのクラスメイトです」

「酷ッ!日吉酷い!」


俺達のやり取りに、楽しそうに笑ったその人。
見た感じ、クールでとっつき難いかなって思ったけど、意外に話しやすい?
まぁ、日吉もそうか。


「それより自分、こないだテニスコートに居た奴やろ?」

「へ?」

「ほら、俺に門は何処かって聞いた」

「あ!」


漸くそこで俺の記憶ファイルはあるページに辿り着いた。
そうだ!関西美人さん!


「俺は3年の忍足侑士。日吉と同じくテニス部なんや。よろしくな」

「あ、2年の旭絢彦です。よろしくお願いします!」


ふわっと忍足先輩が微笑めば、俺達を見ていた周りの女子達から黄色い悲鳴と共に写メのシャッター音が聞こえて来る。
やっぱりテニス部人気ってすげぇ…。

つうか、跡部さんといい、日吉といい、忍足先輩といい、テニス部は何でこうも粒揃い?
並びたくないんだけど!






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