参謀様と私の愉快な毎日
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端女。はしため。召使の女、女中の意。By広●苑…。
「バレちゃったんだ?蓮二に」
「うん…」
朝、会うなり泣きついた私の昨日の出来事を聞いた目の前の人物は、「寄りによって…」と苦笑いを浮かべた。
「柳蓮二があんなに性格の悪い奴だなんて聞いてないよ…精市くん…」
幸村精市。
王者立海大附属高テニス部の頂点に立つ部長。
精市くんとは1年の時に同じ委員会になったのがキッカケで仲良くなった。中学の時から有名人であり、最初は身構えていたが、何て事はない。優しくて、思慮深い、芯の強い人だった。
2年になってから同じクラスになり、2人で美化委員になり、3年になった今年も嬉しい事に同じクラスになった。
「まさか、あんな寂れた商店街の小さな本屋に来るなんて思わなかった…」
私がバイトをしていたのは地元商店街の小さな本屋。バイトなんて取らないような店なのだが、店主であるお爺さんが身体を壊して入院してしまい、お婆さんも看病で店に立つ事が出来なくなった。そのため、昔から通っていた私をバイトとして雇ってくれた。
私の地元は立海から離れた地域であり…多分学校で一番私が遠い…立海生が来る事は無いだろうと思っていた。
ところがどっこい。奴は現れたのだ…。
「しかも端女って何!?何させる気!?」
「まぁまぁ、落ち着いて。飴食べるかい?」
「食べる…」
精市くんに、ピンクの包みの飴玉は良く似合っていた。
飴を口に入れると、途端に甘いイチゴ味が広がって、気持ちが少しだけ浮上した。
「まぁ、流石に蓮二も女の子に過酷な事はさせないと思うけど…」
「過酷な事って何!?」
「まぁ、色々?」
明らかに言葉を濁した精市くんに、私は机に突っ伏した。
「真田くんに見付かって怒られた方がマシだったかも…」
精市くんと柳蓮二と同じテニス部の真田くん。風紀委員会委員長であり、自分にも他人にも厳しい人。
確かに真田くんも怖いけど、柳蓮二の底知れない恐ろしさより何十倍もマシだ。
「精市くん、骨は拾ってね…?」
「勿論だよ」
あぁ、精市くんの困ったような笑顔も癒されるよ…。
凄く…。
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