稲妻

□ふどかた
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気づくと何時も見てしまっている彼女は
桃色の髪をサイドテールにして結っている。

口は悪い、開いたら暴言。何か言うとすぐ突っかかってくる。男勝りで、可愛げ何てない。
黙っていれば可愛いのに、と何時も思う。アイツに告白してどれだけの男が海のそこに沈んだかなんて数え切れないだろ。
そんな女らしさの欠片もない彼女を俺は好きだった。

あぁいうやつほど自分のものにしたくなる。そういう性分だから。



「なに、見てんのよ。」

ほら、見ていただけで睨んでくる。彼女は凄く嫌そうに俺のコとを睨んだ。

「別に目に入っただけだし、お前のコとなんかわざわざ見ねぇよ。」

俺も大概素直じゃないからこうやって毒を吐く、だからいつまでたっても縮めたい距離は縮まらない。

「ふぅん、あっそう。」

「相変わらず冷たいねぇ、忍チャン」

最後の言葉を放った瞬間、俺の腹に衝撃が走った。要するに、殴られた。

「名前で呼ぶなって言ったろ、ハゲ。」

ほら、また暴言。

「いいだろ、別に。小鳥遊って何か呼びにくいし」

下の名前で呼ばれることを嫌がっているこいつは呼ぶと機嫌が悪くなる。

「そんな理由で呼ぶな」

「じゃあさ、どんな理由だったら呼んでいいんだよ」

「…例えば、同じ苗字で仕方なく、とか。恋人だったり」

それくらい。と彼女は付け足した。

「恋人なら呼んでいいんだ」

意外だったので思わず口に出して呟いた。恋人でも呼ばせないと思っていたのに。
そんなことを言うと彼女はそうだよ、と小さく呟いてその場を離れて行ってしまった。

会話なんてこんなもの。
笑いあったりなんかしないし
馬鹿みたいな話もしない

要するに、その場でただ一緒の場所に居るだけの存在。
一瞬の時間だけめぐり合わさった時間の中にあるほんの小さな出来事。

そんな風にしかきっと思われてない。
深い関わりを持とうとしない彼女。

どうしても欲しかった。

だから、背中を向けて歩いて行く彼女をそっと見つからないように追いかけた。


−どうかこの思いが報われますように−
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