テニプリ長編

□プロローグ
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「…え、日本を出る?」




『…おん、眞弥くんにな。誘われて。
母さんも行っておいでって、』




驚く双子の弟に姉は申し訳なさそうに呟く。


「…いやや、俺姉ちゃんと離れたない!
謙也かてそう言うで!!」



『侑士…』


「まだテニスだって勝ってない!
一緒に頑張ろって言ったやん!
上を目指そうて!!」


『………』


「なあ、なんとか言うてや姉ちゃん…」


黙る柚華に
肩を掴んでいた手は力が抜け、
膝から崩れ落ち肩を震わせる侑士。


そんな姿にしたのは紛れもなく自分であると自覚している柚華は何も言えずにいた。
それに彼自身、普段から声を荒げるようなことはしない。
ただ、双子の片割れのこととなると、どうしてもそういう訳にいかないのだ。


それ程、お互いのことを想いやっているのだ。


「…なあ、柚華。
俺のこと。嫌いになった、?」


侑士が柚華を名前で呼ぶときは
大抵不安がっているとき、助けてほしいときや
真剣なときである。
そのことを分かっている柚華は自然に眉間にシワを寄せる。

『…んなわけないやろ、アホ。』


「じゃあ、なんで?」


まだ発つ理由を聞いていなかった為、問いただす。

一呼吸おいた後、柚華は口を開いた。



『…うちはな、強くなりたいねん。』



「強く…?今でも十分…」


そう。
侑士のいう通り、
彼は今だに彼女に勝ったことがないのだ。
彼以外にも、他の誰にも負けた姿を見たことがない。
なのに発つ理由がわからない。



『世界はな、広いの、知ってるやろ?
…自分がどこまで通用するんか試したいねんわ。
せっかく眞弥くん言ってくれたし、
この際、てっぺん目指そって!』



「てっぺん?」


『うん!大会でな、一位とったる!
…そこでな、侑士にお願いやねん。』



「お願い?」

首を傾げる侑士に柚華は
侑士の手を強く握った。


『侑士には、こっちで
てっぺん目指してほしい。』


「……俺が?」



驚く侑士に微笑む柚華。



『うん。
…中3の全国には戻ってくる。
そこで、会おうや。
お互いてっぺん取った状態で。
侑士がてっぺんとるとこ、
ちゃんとこの目で見るから。』



「…ほんまに?
見てくれるか?」


『おん!
それまでさ、今短い髪の毛。
伸ばし続ける。
約束!!』


そう言い、小指を差し出す姉に
フッと笑い自身の小指を絡める。


「…そんなん言われたらしゃーないなぁ。
その代わり、姉ちゃんもてっぺんとるんやでぇ?」




『わかっとるわ!笑』


さっきまで不安そうな顔をしていた2人は、
いつものように微笑みあっていた。


小指を絡め
お互いの決意を確かめながら。
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