ましろ色シンフォニー
□第3話
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悠梨が教室に入ると周りの雰囲気がどんよりしていた
まだクラスの担任の先生が来ていないこともあってか、結女の女子生徒が各務台の男子生徒をチラチラ見てはコソコソ話をしていた
原因は恐らく愛理の言葉だろう
「…………」
空気に敏感な新吾はかなりげっそりしていた
『…新吾、大丈夫…じゃないな…』
悠梨は新吾の顔色を見て心配になり近づいて声を掛けるも反応がない
『反応がない…ただの屍のようだ…』
「大丈夫…じゃないけど死んではいないよ」
悠梨1に再度声を掛けられると今度はちゃんと反応してくれた
とはいっても声に元気がない
「おー悠梨遅かったなー」
新吾と話していると隼太が駆けつけてきた
『まあ、色々ね…』
悠梨は一学年先輩にぱんにゃなるものを引き渡したとか、学園長に捕まっていたとかは話す必要もないだろうと思いぼかしておいた
「なんだ?そんなに腹の調子でも悪かったのか?便秘か?それとも下痢か…?」
歯切れの悪い言い方に隼太は食いついてくる
もとはといえばトイレに行くと言ってあの場を離れただけあってどうやら腹痛だと勘違いしているようだった
『いや、あの…』
流石にこれには悠梨も驚いた
食いついてくるだけならともかく、便秘や下痢など、およそ公の場で言っていい単語ではない
「…お下劣」
「殿方には品がございませんわ」
それを近くで聞いていた結女の生徒は嫌悪感を露にする
「…うぅ」
その様子を見ていた新吾はいっそう顔色を悪くさせていた
『新吾…気の毒に…』
流石にこれは可哀想だと素直に思っていた
関係者といえば関係者だが、自分が直接言ってないだけあってどう対処していいかわらないでいた
その時だった
愛理に八塚先生と呼ばれていた女教師が教室に入るなりおろおろしていた
担任の先生が入ってきたことをみんな確認すると視線は一気に八塚へと向かう
「ひっ…」
八塚はクラス全員の視線を浴びたじろぐ
「八塚先生、早くホームルームを始めてください」
愛理の凛とした声が教室内に響く
「あっ、はい。す、すすみません…やっぱり瀬名さん怖い…」
『(あの人おどおどし過ぎだろ、大丈夫なのか…?)』
仮にも教師、しかもただの教師ではなく今は仮統合のテストクラスを請け負う担任。異常なまでに結女の生徒の反発心が強いなか、あのような生徒に気おされている教師で大丈夫なのか、と頭を抱えずにはいられなかった
「えっと、ではテストクラスとしての最初のホームルームを始めたいと思います」
テストクラス、その単語を耳にした結女の生徒は顔を一層固くさせた
「………」
新吾は居心地悪そうにしてホームルームが終わるのを待っていた
『………』
悠梨は新吾とは違い、窓際の席に割り当てられ窓の外の景色を呑気に見ていた
「…以上で連絡事項は終りです。えっと、これでホームルームを終わりにします。最初の授業は体育ですので男子の皆さんも女子の皆さんも体操服に着替えてグランドに集合してください」
ふぅ、と新吾と八塚のため息が同時に聞こえた
八塚はホームルームが終わるとそくさくと教室を後にした
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