ましろ色シンフォニー

□第2話
1ページ/6ページ


 
『(蘭華さんに言われて出てきたけど、コレってひょっとしてかなりヤバい?っていうかヤヴァい?)』


講堂内、悠梨は目の前にいる愛理を見る


悠梨が居なくなったことを謝ろうとした時だった


愛理の表情が先ほどとは一転してキッと目の前の目に涙を溜め今にも泣きそうな表情をしている


悠梨を睨む


「…っ!八塚先生、後は任せました」


愛理はそう一言うと踵を返し、来た方から講堂を後にした


「えっ…!?瀬名、さん…?」

万智はオドオドした表情で愛理の後ろ姿を見ていた


『ふぅ…やれやれ』


悠梨は溜め息を吐いた


「えっ、と…?」


そんななか新吾が戸惑いながら今の状況を整理していた


他の各務台のテスト生もポカーンと状況を飲み込めずに佇んでいた


「なにが、やれやれ…よ。さっさと愛理を追いかけなさい!」


蘭華は怒鳴られずに済んだことで安堵し、また同時に怒鳴られる以上に厄介なことになったと困っている悠梨に声を掛ける


『やっぱ、そうなっちゃいます…?』


「当然よ、事態を収集しなくちゃ」
本日二度目のため息をつく悠梨


一度深呼吸をし愛理のあとを追う


『お〜い、待ってくれよ〜あ〜いり〜』


状況にあわない呑気な声が講堂に響いた


「「「……」」」


講堂内は静まり返っていた



『なぁ、待ってくれよ。少し俺の話を聞いてくれって!』


「うっさい。アンタのことなんか知らない…」


愛理は後ろからついてくる悠梨に振り返ることなく、歩きながら呟くように言う


『なぁ、だから俺の話をーーー』
「ふざけないでよ!!」


廊下を歩いていた愛理の怒鳴り声が講堂にまで聞こえた


『………!』


「突然いなくなって、突然現れてきて一体なんのつもりなの!?」


そこで初めて愛理が振り返り悠梨を見た


「私が…!」


「…私がどれだけ…っ!!」

そこで言葉を区切ると、また悠梨に背を向け歩きだす


『あい…』


「とにかく!私にはもう関わらないで!!アンタなんか…だいっっっ嫌い!!!」


振り絞るように今まで溜めていた言葉を出し終えると、愛理は走ってその場を後にした


流石にそんな愛理を悠梨は追えるわけもなく、本日三度目のため息を吐いた



「あらあら、さっそく嫌われちゃってるわね」


悠梨が講堂に戻ると蘭華がニヤニヤしていた


『いや〜、こりゃ参ったな』


肩を竦める悠梨


『なんとかなりませんかね?』


「悠梨が時間を掛けていく以外は…ね」


『前途多難だにゃ〜』


「あんまり困っているようにも見えないわね」


蘭華は悠梨を見て愉快そうに言う


『いやいや、もう顎上げ』


そう言って、顎を上に向ける悠梨





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ