□『双子と恋人』
2ページ/3ページ


双子と言えど差異はある

髪の毛の分け目が
右なのがアル
左なのがベルジュ
利き手が
右なのがベルジュで
左なのがアル
しかし食事の好みや
酒の許容量は同じで
更に『アルベール・アルヴァレス』を二人一役で演じるにあたり、利き手や動作は勿論矯正しており
知っている人間でも、ふたりが本気になると見分けるのは難しい。

の、だが。

「「ゲーフェン君」」
「…右がアルで左がベルジュ」
ちら、と一瞥でゲーフェンが言うと
暫く同じ表情で黙っていたふたりが
不思議そうに顔を見合わせる
「どうして…」
「わかるんだろうね?」
「…私にも不思議だ」
「ゲーフェンくんだけだよ、一目で見分けられるのは」
「…お前ら俺の横で交互に喋るのをやめろ」
髪型を元に戻し
ふたりがゲーフェンの両隣に座る。
「第一、お前達は全然似てないじゃないか」
「きみは変なことを言うなぁ」
「……私たちを完璧に見分けられるのは、それが理由かい?」
「ああ、さっきだって…アルのやつは目を輝かせてたし、お前は自信なさげにしていた」
だからわかる、とゲーフェンは事も無げに言う。
「…俺にとってお前たちは、ひとりではなくふたりなんだ、だからもう俺を試すな…」
ぼろぼろっ
「っ、て!?」
ベルジュの瞳から大粒の涙が溢れ出し
アルとゲーフェンがギョッとする
「ベルジュ!?」
「兄さんっ!?」
ぼろぼろと泣くベルジュに
おろおろするゲーフェンと
わたわた慰めるアル
「ちょ、兄さん、にいさん泣かないで!何が悲しかったんだい!?私にだけでいいから言って!」
「お、おい、ベルジュ、泣くな、泣くなよ…!」
ベルジュの涙は止まらず
だんだんアルも悲しくなってくる。
「兄さん泣かないで…!」
兄の感情に感応して
弟の目尻に涙が浮かぶ。
ゲーフェンは困って
泣いている双子の頭をガシッと掴んで
強く抱き寄せた。
「泣くなド阿呆っ!」
怒鳴るように叫ぶと
ビクッと双子の肩が跳ねて
それから泣き止む。
「ぁ、ごめん…少し、取り乱した」
「びっくりした…」
「全くお前らは…!」
ゲーフェンはふたりの髪を撫でてキスをする。
ああめんどくさい
けどかわいい。
そう思いながら、恋人たちをなぐさめる。
ふたりと恋をするようになって
ずいぶんゲーフェンは
自分が丸くなったと感じるようになった。
『……父性?』
いや、恥ずかしいが

愛、か。

「ありがとう…」
「ゲーフェンくん、大好き!」
「ああ…」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ