□『シルバーツインズ』
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「ゲーフェン、構って」

「アル、お前は…」
げんなりとゲーフェンが本を片手にアルベルジュを見る。
アーベルジュは向かい側のソファで本を読んでいる。
「兄さんもゲーフェンも構ってくれないから、私はつまらないんだ!」
「お前は本を読め!少しは学ばんか!」
「戦はフィーリングだよ」
「この戦馬鹿!」
ったく、と言いながら
ゲーフェンはアルの好みそうな戦記物語を差し出す。
メガネをかけたベルジュは黙々と
戦術書を読み込んでは参考になりそうな箇所を羊皮紙に書き込んでいる。
双子と知った時
ゲーフェンは驚きより前に
「ああ、なるほど」
と妙に納得してしまった
バラバラなのだ。
猛将と智将
全く異なる貌が共存する
これがひとりの人物ならば
狂気の産物だ。
当時の彼は戦慄と不信を抱いていた
だから、安堵したのだ。

しかし―――

ちゅっ
「……」
ちゅー
「おい」
にっこりアルは笑う
「しかめっ面は健康によくないよ」
視線を上げると
本から目を上げてこちらを見るベルジュがいた。
ふぅ、とため息をつき
本を置くと
「ベルジュ」
「!」
とんとん、とソファを叩くと
おずおずと遠慮がちに
ベルジュが近づく。
「兄さんもキスすればいいのに」
「煽るな…」
ちゅ…っ
「っ」
「ゲーフェン君」
恥ずかしそうに、ベルジュはぎゅーっとゲーフェンに抱きつく。
「兄さん、私も!」
「お、まっ」
ふたりに抱きつかれて
ゲーフェンは狼狽える。

ゲーフェンは現在
「ふたり」の
正しく言うと「アルヴァレス」の恋人である。

たびたび入れ替わっていたふたりを、もしかして二重人格かもしれないと思い
「私が何者であったとしても、好きでいてくれる?」
という問いに是と答えたが為である。
別段、その事実に関して
元より同性を愛するという禁忌を呑みこんだ故に今更抵抗感はない。
奔放で狂いを持ったアルも
おとなしくて自虐的なベルジュも
一心に、一途にゲーフェンを愛している。
その姿が愛おしいから
ゲーフェンは全力でふたりを愛している。
…少々夜は激しいが
膝にベルジュを乗せて
背中からアルに抱きつかれ
銀色のふたりに侍られて
もはや読書ではなくなりながら
ゲーフェンはふたりを撫でてキスを返した。



『シルバーツインズ』




双子は
たくさんたくさん
つらい思いをしましたが
互いに支え合って
ふたりぼっちで生きてきました。
ふたりを受け入れてくれた
愛しいあの人はもういません
ふたりが憎み
また愛していた場所を取り戻す為
ふたりはひとりとして
戦い続けました。
けれど
受け入れてくれる
金色の少女がいました
仲間たちができました
彼らが何者であろうと
全ての恩讐を乗り越えて
愛してくれる人ができました。
だから、今
ふたりはひとりどうしになりましたが
しあわせです。






END
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