□『にゃんにゃんの日』
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『毛づくろい』




さり、さりり

「……」
厚めの舌が自分の敏感な器官を
優しく舐めていく感覚に
ゲーフェンは真顔で内心キョドっていた。
まるで親が子どもにするように丁寧に
アルヴァレスはゲーフェンの耳を舐めている。
これがほんの少しでも恋人同士の色気を帯びていたなら
今すぐにでも誘っただ何だこじつけて襲えるのだが
舌先に込められるのは純粋な親愛で
ここで襲ったら男としてダメな気がして
必死に耐えていた。
(大体耳は感覚器官であってだな
敏感なのはお前それ自分自身で解ってるだろうがコラ
さんざ俺に苛められたのもう忘れたかオイ30代後半
あー畜生、クる、やばい、勃つ。)
じろ、と
アルヴァレスを見ると
にこ、と
目が優しそうに笑って
うぐぐ、と言葉に詰まる。
子ども扱いにムカつくが
ただただ与えられる慈愛に胸がくすぐったくなるし
生殺しの快感に獣にもなりそうで
とにかく
ゲーフェンは涙ぐましい程、耐えに耐えていたのだ
「…ん、終わったよ」
舌が離されて、大きく息をつく。
ガツンと言ってやろうと
アルヴァレスの顔を見ると
にこーっ、と
そりゃもう輝かしく
目を細めて笑っていた。
「っ」
「気持ちよかったろ?」
(ああ気持ちよかったとも!)
もはや血涙を心の中で流しながらも
主に色気の方向で
未だに何も解っていない
愛しくて憎たらしい恋人を
礼代わりに抱きしめながら
ゲーフェンは大きくため息をついたのだった。
したん、したん、と
アルヴァレスの尻尾だけが
悪戯っぽくゆれているのに
全く気付かないまま。
意外と
彼の恋人は策士である。




                END
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