□『双子と恋人』
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『双子と恋人』



すこー…すこー…
すぅ…すぅ……
ぐ、ぐぐぅ…ぐぅ
気持ちよさげな寝息と
苦しそうな寝息
しかめっ面のゲーフェンに
双子がコアラのように
がっちりしがみついて眠っていた
「……ぐ、」
ゲーフェンがあまりの寝苦しさに起きようとするが、成人男性ふたりに挟まれてはさすがに動けない。
首だけ上がって、ぽすっと枕に着地する。
「……おい、起きろ」
低く呟けど、一向に起きる気配はない。
ため息をついて、双子を観察する。
眠っていると、本当に鏡のようだ。
「………ん……」
ベルジュが目を覚ます。
「……よう」
声をかけると、自分の体勢に気がついたらしく
顔を赤らめてぱっと離れると、寝乱れて胸元が開いている自身の夜着を整える。
「生娘かお前は」
「……だ、って」
恥じらいを浮かべるベルジュが可愛くて
ゲーフェンは笑って、それからまだ寝ている弟のほうを揺さぶる。
「アル、起きろ」
「………んが…っ」
まだ眠いとばかりに
アルはゲーフェンに身体をこすりつけて唸る。
「全く…今日は休日だから良かったものの…」
ゲーフェンが呆れつつも愛おしげに髪を撫でると
ベルジュが着替えて
外に出て行く。
「あ、おい」
言葉少ななベルジュは
時折突拍子もないことをやらかすので心配だ。
ゲーフェンはしがみついたままのアルを見る。
『逆にこいつは安心なんだがな…』
不安定の安定というか…
ガチャッ
「ベルジュ…?」
いい匂い。
ベルジュが持ってきたのは
三人分の紅茶と朝食。
「……アルを起こすには、これが一番だよ」
優しく笑って、ベルジュはパンを千切ってゲーフェンに手渡す。
ゲーフェンが無言でアルの鼻先にパンを突きつけひらひらさせると
ぱちっ
ぱくんっ
「っ!?」
指ごとぱくん!と口に入れて、アルが目を覚ます。
「……おはよう、アル」
指を離してから
もぐしゃもぐしゃと咀嚼して
ぱっと笑顔になる。
「おはよう兄さん、ゲーフェンくん」
「……遅よう、と俺は言いたいがな」
輝く笑顔のアルに
ゲーフェンは呆れ顔で答えた。
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