□『酔っ払い共のクリスマス』
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『酔っ払い共のクリスマス』




呑んべ共が集まると
深夜過ぎまで普通に飲む

わっはっはっは
どんちゃんどんちゃん

イギリス人もとい
ブリタニア国民は
酒をこよなく愛する。
俺の出身国であるプロイツェンも
『ビールがあれば世は全て事もなし』という人たちが非常に多かったが
生憎と俺は下戸だ
『部屋に帰って寝たい…』
宴会場に漂う酒臭さだけで
正直くらくらしてくる。
「ゲーフェンくーん」
「アルヴァレス…お前な」
アルヴァレスの背後には
死屍累々。
ツブされた騎士たちが寝こけている
飲み比べでこいつに勝てるやつがこの騎士団にいるんだろうか…
アルヴァレス自体もだいぶキてるらしく
足元はふらつき
全身は紅潮している。
肌が白いから、酔うと首まで赤くなる
灰銀がとろんとして
かわいい…
「どーんっ!」

ぶちーんっ!!

「……はぁ?」
シャツのボタンが弾け飛び
上半身があらわになる
にこにこと幼子のようにアルヴァレスは笑う。
…待て、おい、待て
「アルヴァレス!」
「はは、裸になったぁ、ははははははは」
「もう寝ろお前」
けらけらと笑うアルヴァレスを抑え込む
これはもうダメだ。
完全に酒に飲まれてる。
抑え込まれながら、アルヴァレスはもがいて
俺の首筋に顔をうずめて
深く息をする。
「っ」
まさか、アレか
あの悪癖がくるのか!
「っはぁ…いいにおい…ゲーフェンくんはいいにおいがするねぇ…」
「そりゃよかった、ほら、寝るぞ」
にこにこ笑顔で
アルヴァレスは言う
「セックスしよう」
「………!!!」
「どーせ君とわたしはアンチキリストなわけだしとことんまで背徳しちゃおう」
「バッ…おま、…!」
誰も聞いてなくて助かった
アンチキリストと言うより
無神論者だ!
それはまぁ俺だってお前となら辺獄を百年彷徨おうがダンテの神曲にある色欲地獄や修羅地獄に落とされようが構わないがそれよりお前セックスとか堂々というなバカ
自分の誕生日から逆算してみて、12月24日が『仕込まれた日』だった奴が世の中にはいるんだぞ!
「阿呆!ひとりで盛ってろ!」
俺は酔って大胆になったアルヴァレスも好きだが、この開けっぴろげになるところは苦手だ。
しかもヤってる最中泣く。
「…じゃ、ひとりでする」
「な、」
ぷい、とそっぽを向き
アルヴァレスは宴会場からすたすたと歩き去っていこうとして

ビターン!

盛大に転んだ。
「あぁぁ…!何やってんだお前は!」
これだから酔っ払いは!
ワキに手を差し入れて引っ張り起こすと
びっくりした顔で俺を見る
「ゲーフェンくん」
「あぁ!?」
「こけた」
「見りゃわかる!」
話の通じなさに叫んで
「っ」
ぎょっとする
アルベールが、両手を俺の頬にあてて
涙をぽろぽろ流す
「げーふぇんくん」
「なん、だ」
「ひとりじゃできない」
「………」
「きみがいないとわたしは、なんにもできない………」
抱きしめたくなって
固まると
「あー!将軍が将軍泣かせてますよ隊長ぉー!」
「おー!」
「なーかしたーなーかしたーしょーぐんがなーかしたー!」
「…………」
「げーふぇんくん?」
「いいぞ!もっとやれ!」
「仲良くしてくださいよおふたりさん!」
わぁわぁと酔っ払い共が
各々ジョッキを手に叫ぶ

「やかましいッ!さっさと寝ろッ阿呆共がッッ!!」

蹴散らしかき分け
背負って部屋に戻る。
「げーふぇんくん」
「今度はなんだ!」
「…といれ」
「ああもう連れて行ってやるから…」
ふらふらしながらトイレに入っていくアルヴァレスをはらはらと見守る。
惚れた弱みは恐ろしい
多分俺は余裕でこいつの吐いたものを処理できると思う。
ぐわんぐわん揺れながら戻ってきたアルヴァレスを背負い廊下を歩く。
白い息。
雪の降る廊下は
冷え切っている。
ぶる、と震えて
アルヴァレスが顔を俺の背中に擦り付ける。
「寒いか」
「ん…」
抱えなおしていると
「げーふぇんくん」
「今度は水か?」

「……だいすき、ありがとう、あいしてるよ…」

来年もよろしくね…と
耳元でささやいて
そのままアルヴァレスは、寝息を立て始めた。
「……〜〜〜ッ!!」
奇襲と生殺しに俺は悶えながら
部屋へ急ぐのだった




『酔っ払い共のクリスマス』




「ゲーフェン君」
「なんだ」
「頭痛いし、なんで私裸なんだよ…」






END
 

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