□『シルバーツインズ』
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双子はいいものだ…



『シルバーツインズ』




昔々あるところに
双子の兄弟がおりました
同じ顔、同じ色のふたりは
同じ場所で成長できるはずでした
しかし、彼らの「家」は
彼らを受け入れませんでした。
兄は家族のもとで育てられ
弟は乳母以外誰も来ない
薄暗い部屋の中で育てられました。
兄は弟がいることを知り
弟にこっそり会いに行き
兄弟は幸せなことに
心までは引き裂かれずに済みました。

政に長けた兄と
殺戮に長けた弟

弟には生まれた時から名前がなく
その心には欠けがありました。
だから兄は
ふたりでひとりになることを思いつき
ひとつの名前を共有し
ひとつの立場を共有することにしました

アルベール・アルヴァレス

それが、ふたりの名前。



「弟さんの名前、何にしましょうか」
「いつもは、アルと呼んでいたけれど…」
「兄さんは兄さん」
うーむ、と考えて
ローザは不本意そうな顔をして
名づけた。
「あなたは、アーベルジュ」
兄を差す。
「あなたは、アルベルジュ」
弟を差す
「そしてあなたたちふたりで」

「アルヴァレス」

第三者に名付けられ
ひとりは
ふたりになった。
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