□『愛し子よ』
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あなたの足に

銀の足枷をはめましょう

同じ過ちを犯さぬように






カツン
カツンッ、カツン

汚れた石造りの床
煤けた石の壁
崩れた窓から差し込む陽光
苔の生えた水たまり。
古びた扉を
ゆっくりと開く。

ギィ……

古い臙脂色の絨毯
煤けた暖炉と
埃まみれのマントルピース
格子窓から差し込む
あたたかな光が
部屋を照らす。
部屋の真ん中に置かれた
大きなダブルベッドの足に巻き付いた
銀色の太い鎖が
ベッドの中へ伸びている。
ベッドの中に寝かされていたのは
銀色の男だった。
シャツにズボンという
簡素な格好の彼の両手には銀色のゴツい手錠。
そして右足首には
銀色の大きな足枷が
彼の足首や手首の官能的なラインを引き立てるかのように
しかし確実な拘束具として
そこにあった。
「………」
ベッドに腰掛けた男は
銀色の男を見下ろし
嫣然と笑い
ゆっくりと言葉を紡いだ。

「起きろ、アルヴァレス」

「………っ、ん、ァ?」
身じろぎして
ゆるゆると瞳を開いた
アルヴァレスの目が
大きく見開かれる。
「ゲーフェン、く…?」
「目覚めはどうだ?」
「え、…ッ…!?」
起き上がろうとしたアルヴァレスは
両手と足首の枷に
驚き慌てふためく。
「これは…っゲーフェン君、ここはどこだ!どうして私を…!」
「……」
ギシリ、と
古びた大きなベッドが
小さく音をたてる。
「ゲーフェンバウワーッ!答えろッ!」
アルヴァレスの叫びに
ゲーフェンは重々しく
静かに告げる。

「お前はここに囚われた」

「ここが、今日からお前の世界だ」
ここからは出られない。
誰も助けに来ない。
「……君は…な、何を言って…ッ!」
素早く押し倒され
息を詰める。
ゲーフェンの手には
いつの間にか
紅い首輪が握られている。
「諦めろ、諦めて…」


「俺のものになれ」


「やめ……ッ!」
ブチンッと
ボタンを千切り飛ばす
嫌な音と共に

檻の扉が閉ざされる音を

聞いた気がした。
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