ヘルキチ

□tasting
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気に入らない。
先ほどから私のモノに誰かからハートが飛んできている。

私がわざわざ教えてやっているのに、コイツは上の空で。


「おいサトル。聞いているのか」


ゴスッ


「痛ーっ!?」


おっと、足が長いせいであたってしまった。


「な、何だよ!!」




「うむ。だから、さっきから熱い視線を送られてるぞ」



「え?」



予想通りの反応に満足し、二度目のセリフを吐く。


「…立花君?」

ドアの陰からひょこっと顔を出し、サトルを見つめる人物。
サトルがその人物の名を呼んだ瞬間、目の前に移動する。

「守屋君…今日は、いい匂いがする」



「ふぇっ!?」

地獄のにおいとは別に嗅ぎ分けたのだろう。
確かに今日のサトルは少し色気のある香りがしている。


「…」


しかしなんだこれは。いつか人間になったとき感じたあの不快な感じに似ている。

腹の底を黒い何かが這いずり回る感覚。



―――不快だ。

ガンっ

ドーン



この感覚はサトルが関係するのだろう。

とりあえず蹴っておいた。


「ぐほぁっ!!げほっ…何すんの!!」





「行くぞサトル。そんな奴と話す時間があるなら料理の勉強でもしろ」

料理の勉強などただの戯れ言。
サトルの目に誰かがうつるのが嫌なだけ。

「ちょ、わかった、わかったから!!」



「守屋君。そこに誰かいるの?」








「や、独り言!!;;」




「ふーん…ねぇ、今からうち来ない?」


「えっ!?あ、いや…」


サトルがちらりと私の方を見た。


「サトル」


「は、はいぃぃ!!」



ダメに決まっている。
目でそう伝えた。


「ごめん立花君!また今度!!」
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