Novel-Short

□眠り姫
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「事務所に顔出してからもう一度こっちに寄る。ユノ、チャンミン、俺が戻って来るまでに身支度しとけ」

「あ、僕も一緒に事務所行きます」

マネージャーに続いて玄関へ出たら、パンをくわえたまま喋ってるのだろうユノヒョンの「へ?」と間抜けな声が後ろから聞こえてきた。
マネヒョンも不思議そうな顔をしているが、素知らぬ風で靴を履く。
二人の反応も無理はない、僕は別段事務所に用事が無いのだから。



「おはようございます。沙緒さんいますか?」

「あ、チャンミン氏おはようございます。水樹は、えーと……おいっ水樹まだ来てないのか?」

顔見知りのスタッフが揃う部屋に入って目的のデスクに目を向けたものの、探している人物はそこに居なかった。
一番近くにいた男性スタッフが大きく声を上げると、みんな振り返ったり首を伸ばして彼女のデスクを見やる。

…もしや重役出勤?

「荷物あるけど今朝は誰も姿見てないし、どうせあそこでぐーすか寝てるんじゃないですか?」

行方不明の同僚に対して特に心配する素振りも無く平然と答えるスタッフ。
その推察を聞き、「あぁ…」と一同納得したように頷いている。

「さてはまた仮眠室に泊まり込んだな。あいつそろそろ女捨ててるんじゃないか?」

「仮眠室?」

ウチの事務所にそんなものあっただろうか。
僕の疑問に、苦笑いと共に答えが返された。

「応接室ですよ。水樹のヤツ勝手に仮眠室代わりに使ってるんです。ちょっと行って起こしてきます」

そう言って立ち上がった彼を手で制する。

「いいですよ僕行ってきます。沙緒さんに話があるので」

「すみませんチャンミン氏。あいつ寝起き悪いんで、バシッと遠慮なく叩き起こしちゃって下さい」

「任せて下さいユノヒョンで慣れてます」

アハハと笑いに包まれた部屋を出て、次の目的地・応接室へと向かった。


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