Double
□5.5:ある日の嵐一家
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「おはよー!」
「っはよ」
「はよー」
楽屋のドアを開けて挨拶すれば、机に広げていた新聞から顔を上げた翔くんと、その隣で新聞にかじりついたままの大ちゃんから挨拶が返って来る。
私が3番目か、と荷物を置いて向かい側の椅子を引いた。
……って。
「お、大ちゃんが新聞読んでる…!?」
翔くんはもう恒例だからともかくとして、大ちゃんと新聞ってなんて異色の組み合わせ!
まさか明日は雪!?いや嵐!??(嵐が嵐呼んじゃったり)
「なんだよ俺だって新聞くらい読むべ」
大げさに驚いて後ろによろめいた私を見て、不満そうに口を尖らせる大ちゃん。
しかし翔くんが笑ってツッコむ。
「ちげーよ。智っさん4コマと天気予報だけじゃん見てんの」
「明日のオフ釣り行くんだけどさー、この降水確率もう少し何とかなんねーかなー?」
あ、やっぱり。すごい真剣に見てたから何事かと思ったものの、まぁそんなとこだろうなーと納得。
最近目覚めたという釣りに行くにあたり、天気が気になって仕方ないらしい。
「そんなに釣りって楽しいんだ?」
オフといえば家にこもって絵を描くなり粘土をいじるなり超インドア派だった彼をアウトドア派に転向させた新たな趣味。
純粋な疑問をこぼせば、私のつぶやきをしっかり聞き届けた大ちゃんの目がキラリ輝いた。
「おお、じゃあお前も明日来い!ついでに翔くんも来る?」
「えっ明日!?」
「俺はついでかよ!無理だよ今夜ZEROあるし釣りって朝早いんだろ」
「じゃあ翔くん来なくていいよ。ついでに聞いてみただけだし」
バッサリ切られた翔くんがわかりやすく落ち込むのを全く意に介さず、大ちゃんは私に笑顔を向ける。
釣りかぁ…興味あることはあるけど…というより大ちゃんと遊びに行くってことが滅多に無い貴重な機会なんだけど…。
「ごめん僕もやめとく。早起きする自信無いや」
何も予定が無ければ二つ返事できっと即答していたことだろう。
だけど今夜の約束が思い浮かび、明日早起きできる時間に帰れる保証が無いため残念ながら首を横に振った。
「なんだよお前ら付き合い悪いなー」
普段から下がり気味の眉が更に下がって残念そう。せっかく大ちゃんから誘ってくれたのにごめんね。
…でもコレだけは言わせてもらう。
「「いや大ちゃん(智っさん)に言われる筋合い無いし」」
あ、翔くんとカブった。