Double
□7:小さな存在の大きな存在感
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服装良し、髪型良し、メイク良し、メガネ良し。
鏡で一通りチェックしてから、振り返って敬礼ポーズ。
「それじゃあ皆さん一足お先に失礼しまっす!」
「おー沙緒お疲れー」
「いってら〜」
愛するメンバーの声援をしっかりと胸に受け止め、楽屋のドアノブに手を掛けた。
「沙緒、お前コレ!パス!」
……っとと。
もう一度くるりと方向転換。
「すみませんお世話お掛けします…」
呆れ顔の翔くんが差し出したスタッフパスを恭しく両手で受け取る。
「コレ無いと不審人物で出入り禁止じゃんお前」
「ホントは嵐の水樹玲緒なのにねー」
相葉ちゃんの言う通り、ついさっきまで嵐の一員・水樹玲緒としてテレビカメラに収まっていた私。
だけど、メガネを掛けてロングヘアーのウィッグをかぶりスカートを履いてパスを首から下げれば、たちまちジャニーズ事務所のスタッフ兼女子大生・水樹沙緒に変身。
…というか沙緒が本当の私なんですけど。
「ま、こんなややこしい二重生活も卒業までの辛抱だし。それまでは皆にも迷惑かけちゃうけど協力してね」
手を合わせて頼んでから、「じゃあ大学いってきまーす」と勢い良く楽屋を飛び出した。
閉まりかけたドアの内側からニノの声が耳を掠めたけれど、意識がもう外に向かっていた私は特に気にも留めなかった。
「二重生活は卒業までって…あの子、じゃあ卒業したらもう玲緒から沙緒には戻らないつもりなんですかね?」