Double

□4:お兄ちゃん達は心配性
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「あ゛ー…… つ っ か れ た  !!」

うなるように搾り出された声が車内に響く。
その声音の持ち主は力尽きたかのように、隣に座る人物にコテンと頭を預けた。
預けられた方はというと、右肩が少し重くなったものの大人しく枕代わりにさせてやり、自由の利く左手でつむじの見える柔らかな髪を優しく撫でてやった。

「朝から大学と生放送だもんな。お疲れー」

「大ちゃんありがと癒される〜…」

「大野さん俺も癒してー」

突如反対の肩までもがズシリ重くなり、正体はわかりきっていたが大野は自分の左側に視線を投げた。
やはり、そこにもう一人のつむじが見えている。

「ニノ…重い」

眉間に皺を寄せ、今度は迷惑そうに左肩だけ軽く揺さぶる。
しかし一緒になって揺られるだけで全く退く気配の無い二宮に、大野は無駄な抵抗をあっさり諦めると自らも首を傾げて寄りかかった。

「……三つ子」

三列シートの真ん中で密着している三人組を傍観していた後列の三人が、誰ともなしにボソリつぶやく。
呆れたように溜め息を吐く松本と、苦笑しながら見守る櫻井と、自分も混ざりたくてウズウズしている相葉。
反応は様々だが、それもまた日常風景であった。



―――ブルルッ…―――


足元のバッグが振動した感触で、大野の肩に預けていた頭がガバッと起き上がった。
慌てて取り出された白い携帯。

「あれ?ゼミの女の子だ。何だろ珍しい」

出てもいい?と他メンバーの顔をグルッと見回し、全員頷いたのを確認してから耳に当てた。

「もしもし?あーこんばんは〜。……え、メール?ごめん今バイト終わったトコでまだ見てないんだよね。……あ、そうなの?明日のゼミ休講ねオッケー。わかった、わざわざありがと。うん、じゃあねー」

ピッ。

「おぉ女子大生だ」

相葉が妙に感動したようにパチパチ手を叩く。
その横で松本が何か思い出したように自分のバッグを漁り始め、取り出した物を前列の小さな頭にポスッと載せた。

「お前、着替えた時コレ置きっぱなしにしてただろ。楽屋に他の人間入って来てたらどーすんだよ」

「…あ。うそ、ヅラしまうの忘れてた?」

「ヅラって!ウィッグって言えよー」

ツボにハマったらしく膝を打って大笑いする櫻井。
それをよそに、ウィッグを被り直して松本を振り返ったのは嵐の最年少メンバー『水樹玲緒』……ではなく。



―――ロングヘアーの少女、『水樹沙緒』だった。


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