BLEACH 短編集

□Regla
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一護が地獄の力を手に入れ、再び地獄の底へと引きずられ、漸く這い出た頃には一護は死んで、今度こそ尸魂界で死神になっていた

柄にもなく落胆し、再度地獄の底へと引きずり込まれたのは本当にただ、地獄を欺いた罪を償う為だけなのだと思うとやるせない気持ちになる

当てもなくさ迷い、着いた先は咎人の墓場

自分もいずれこうなるのだと、目の前の一部盛り上がった部分をぼんやり眺めた
既に左半身はその兆候が表れている

「くっそ…」

部屋中を鮮血で真っ赤に染め、既に事切れている妹が横たわり…
思えばあの時から全てがおかしくなった

「………会いてぇな…」
「会いにいけば?」
「………お前か」

現れたのは全身を黒い布で覆った女
真っ黒の髪を惜し気もなく垂らしてビー玉でも埋め込んだかのように生気のない瞳、それまた深淵を思わせるに足る色をしている

しかし唇だけは血のように真っ赤に染まっていて、そこがまた人間離れしており、ここが地獄である事も相まって妙に欲を煽った

会うのはこれが三度目だった

初めて会った時は、黒刀が地獄に堕ちて初めてクシャナーダに打ち砕かれた後
苦しみに悶えていた黒刀の傍に腰を下ろして、まるで楽しんでいるかのように微笑んでいた

次に会った時は、黒刀が一護の情報を朱蓮達に与えた直後
興奮冷めやらぬ中、現れた女は呆れているのか眉尻を少し下げながらやはり笑っていた

そして今が三度目

「会いにいけだと?簡単に言ってくれるなぁおい」
「会いたければ会いにいけばいい」
「………黙れよ」
「そんな錆び付いた鎖なんかに不様にも囚われて、他人に期待して、諦めてるから会いたいなんて言うんだよ」
「黙れ」
「地獄って誰が管理してると思う?」
「はぁ?」

そんなのクシャナーダ辺りに決まってる、そう思ったのに何故か唇は思ったように動いてはくれず、代わりに疑問が口をついて出た

「誰だよ?」
「さあ?」
「………よっぽど殺されてぇみてぇだな」
「そうやってすぐ罪を重ねたがる、感情をコントロールしないから」

地鳴りのような声が地獄中に響き渡り、嫌な汗が背中を伝う

「見つかっちゃう」
「ちぃ!」
「どこに行くの?」
「どこ、だと?クシャナーダと戦うんだよ!戦わなきゃ俺達咎人は…分かりきった事聞くな!」

そう言って走り去る黒刀の背中を見つめて女は僅かに口角を上げて呟いた

「馬鹿な子…」





やはりどう足掻いても地獄の番人、クシャナーダには敵うはずもなかった
再度そう思い知らされ、眉を寄せる

黒刀の身の丈より何倍もある腕に捕らわれ、馬鹿みたいな力の前で痛む背骨を意識しながら見えたのは、全身真っ黒の、いけすかない女

「何しにきた!」
「見物しに」

徐々にクシャナーダの口元へと誘われる黒刀

「っ、てめぇは後でぜってえ殺す…!」
「………」

下顎のない番人共は、下顎の代用として己の手を使い、上顎との間で咎人を磨り潰すようにして食す

上顎が僅かに薄皮を裂いた瞬間、番人の手がピタリと止んだ

ジワリと血が滲み、地味な痛みが身体を襲う
しかしそんな事など目の前の疑問の前ではあってないようなもの

何故クシャナーダの動きが止まったのか、意味が理解できずに目を見開くしか出来ない黒刀
目の前には決して好きになれそうもないクシャナーダの顔
背中には血色の悪いクシャナーダの腕

そして更に奥に見える黒い女

「………な、んで…」
「ねえ」
「ッ!」

スッと女が右手を上げるのと同時にクシャナーダから解放される身体
着地もろくに出来ず、不様にも地面へと叩き付けられ、思わず歪む顔

間髪入れずに頭上から聞こえてきた声に、今度は痛みから驚きへと色を変えた

「地獄って誰が管理してると思う?」

ニヤリと上がった口角が全てを物語っていた



血色の唇が弧を描く
憎らしい




私が一言良しと言えば、貴方は晴れて自由の身、意味分かる?だから言ったの、会いにいけばってて、めえ…!






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