ピスメ 短編集

□弔い
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「いいなあ…」


敬愛し尊敬し信愛し依存した吉田先生の隣で生前とは明らかに違う色を主張する

高貴な朱塗りを施された彼女は先生の傍に居られて幸せだろうか
彼女は今笑っているだろうか

それとも大嫌いな赤を顔中に塗りたくられ、泣いているだろうか


「……君はどちらかといえば白だからね…もしかして朱色になんて塗られたから気が狂いそう?」


雪のように真っ白で純粋

先生の為に全てを捧ぐ者同士、常に意識しあってきた

どちらが先生の小姓としてより優秀か
今となれば懐かしい思い出


「………」



しかし


思い出にするには


切なすぎる



「……よく…似合ってるよ…」


彼女は本当に真っ白だった

真新しい紙のように
死人の肌のように

先生を強調するかの如く

真っ白で…


「……朱色は…嫌いだって…前に言っていたからね…だから朱色にしたんだ」


流血を嫌った
そして何よりも命を尊んだ

それは同時に俺への拒絶

自分の命に見切りをつけるな

それが最期の言葉


「………」


最高の漆を最高の職人に仕上げさせた先生の骨と高貴な朱塗りを施された元同志の彼女の骨

赤い方を手に取ると優しく抱きしめた


「………先生と一緒に居られて…羨ましいよ…」


ぽたぽたと彼女の上に涙が落ちる
まるで彼女が泣いているようだ

鈴は先生の骨に視線を向けて呟いた


「……本音は…」



彼女と一緒に居られる先生が少しだけ憎い



再び腕の中で納まっている彼女の骨に目を向ける


「………君の言いなりになるみたいでいい気はしないけど…死ぬのは先生を殺したあの幕府の犬を殺してからって決めたから…まあ見てなよ、俺の方が先生の為になる事してるって所、見せてあげる」


妖美に笑うと彼女の骨を床に置き先生の骨を両腕でしっかりと抱きしめ部屋を出た



さあ、い合戦を始めようか












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