ピスメ 短編集

□kiss
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「鈴のバカ!死ね!ヒイッ!」

目の前にいる大和屋の主人、鈴に死ね発言をしたはずなのに飛んできたのは身の丈程もある大刀

「な、何で膕が怒るのよ!きっと鈴の教育が悪いからってギャア!」

今度は苦手な猫が足元で目を光らせている

マ、マジでこれは迫力あるなあ…

一匹とかだったらまだ平気だけど、数尋常じゃないからね、10匹はいるよ絶対、恐ろしくて数える気も起きねえよ!

「…誰が馬鹿だって?」
「だ、誰って…」
「膕が俺の為に怒ったのは誰の教育が悪いからだって?」
「わあ!近づくな!寄るな!近づかないでマジで!お願い!本気で!肩に猫乗せて近寄るなあ!」

すると鈴はしょうがないねと心底めんどくさそうに呟くと(本当にブチ殺したろかこの餓鬼!)肩に乗っていた猫を下ろす

「これで満足?」
「え、あ…まあ……って!足元の猫も退けんかい!」
「人に物を頼む時はちゃんと言わなきゃ…この口は飾りかな?お願いしますくらい言えるだろう?」

ブチッ!

「お願いします!猫退けろ!白髪!」
「一言余計だよ」

今度は哀れむような視線を向けながら足元で群れをなす黒猫を追い払う

「満足?」
「うん!」
「そう、良かった」
「近い近い!顔近い!」
「そうだね」
「ええい寄るな!近い!」
「そうだね」
「ち、近いって!」
「……ねえ…キスならいいって前言ってたよね?」
「いいい言ったっけ?」
「どもりすぎ」

それから何度も近い近いを本物の馬鹿みたいに連呼する

鈴は溜め息を吐いてもう一度尋ねた

「キスならいいって言ったよね」
「覚えてない」
「…ねえ、キスしたい」
「だあっ!やめなさい!子供が見てるでしょうが!」

指差したのは腦と頭

鈴は二人を見つめて微笑む
膕に視線を向けると同じように笑って言い放った

「散歩にでも行っておいで」
「御意」

チリンチリン

小さな二人を肩に乗せて部屋から出ていく巨漢

「これで子供はいなくなったよ」
「腦と頭こっちずっと見てたよ!泣きそうな顔で!なんか可哀相!」
「だって仕方ないでしょ?」
「何も仕方なくないよ」
「ねえ、どうして拒むの?俺の事嫌い?」

くらえ!超必殺!なみだめ!

「ちょっと、目から鼻水出てるよ、しまってしまって」
「………」
「ギャアアアアアッ!すみませんごめんなさい許して!お願い!」



目から鼻水って…



キスしてくれたら許してあげるよえ!マジで!?そんなのでいいの!?散々拒否してたくせに何この変わりよう!やっぱりやめた!許してあげない!そ、そんなっ、酷い!………お願い、許して…鈴…ね?……こ、今回だけだよ?ありがと鈴!ちゅ、………(ああもう何でこういう事するのかなあ…不意打ちとか卑怯だよ、ホント可愛い、どうしよう、抱きしめたら怒るかな…まあいいか、後で謝れば)えいっホギャアアアアッ!ホギャアって…






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