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□君の瞳。
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懐かしい。

そんな感情なんて今までなかったのに、

なぜだろう、

君の瞳を見ると懐かしく感じる、


会うのは初めてなのに。




時期外れの転校生がやって来た。

名前は沢田綱吉。
茶髪に、背は低く
男なのに弱々しくて女みたいな奴。

だけど、彼の瞳を一目見た時確かに思ったんだ

“懐かしい”と、

何度も言うけど、彼と会うのは初めてだ。
それどころか、“懐かしい”なんて
感じる事も今までなかった


「今日からウチに転校してきた、沢田綱吉だ、皆仲良くやってくれよ」

黒板に達筆な文字で書かれた名前の本人は
下を俯いていた。

最初は恥ずかしくて照れ隠しなのかと思ったけど、
彼の場合は違った。

瞬きもしないで、うっすらと涙の膜を張り何かを見詰めているようだった。

「沢田、自己紹介をしてくれないか」

「‥‥」

「‥‥沢田、聞いているのか!」

「あっ‥はい」

少し不満げな様子で上を向いても彼は何かを見詰める事を止めなかった。

その時に僕は感じた。
“あの瞳が懐かしい”と。

だけどその理由が分からない
思い出せそうなのに思い出せない歯がゆさが、僕を苛つかせた。


時期外れの転校生に、好奇心から皆は彼と群れはじめた。

だけど転校してきた理由は上手い事はぐらかして、結局その事については、何も聞けなかった。


僕は彼を目で追うようにした。
そしたら懐かしさの正体が分かる気がしたし、苛立ちが治まるかもしれないからだ。


だけど彼は好き好んで群れようとせず、
ただただ彼しか見えないモノを見詰めている。

相変わらず、あの懐かしさの理由は分からない。

 
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