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□あの桜が舞う頃に
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桜が舞う季節
僕の嫌いな桜が舞う

昼間の桜は綺麗と人が寄ってくるのに

闇夜に包まれると桜は雰囲気を変える
桜は妖艶になる

人は怖がり、近づかない

昼とは真逆の扱いだ‥


そんな中、あの子を見つけた
明日イタリアへ行くあの子を‥


「何をしているの、
こんな真っ暗闇の中で」

「‥‥夜の桜を見に来たんです」


今日は新月で月の光もないため
何も見えないのに、
あの子はずっと桜を見ていた

変な子、ドジで怖がりなくせに
真っ暗の中一人で桜を見ているなんて


「雲雀さん、最後に一つ言わせてください
俺のこと‥‥本当に好きでしたか?」

「‥‥?」



急にそんなことを聞かれても困る
でも真剣な顔だったから素直に言った

「正直わからない」と

あの子は傷ついた顔をして
僕に告げた

「さよなら」


風が吹く

花びらが散って
君が見えない

ねぇ、なんで下を向いているの‥?

触れようと思っても、
手が動かない

君になんて言えば良かったのか

僕には分からない。

後ろから引きずられるような思いで
僕は君から離れた。

 
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